SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

逆むけ

ある日の、スタッフとのお茶の時間です。

カメ子が、煎餅をかじりながら言いました。

「あっ、指に逆むけができてる・・・。そうだ、あのですね、鳥って逆むけを食べるんですかねえ。

小鳥を飼ってる知人の家に行った時、言うんですよ。『鳥は逆むけを食べるよ』って。」

と、その話題を聞いた瞬間、うつむいて遅番の夜食をすすっていたマル子が、急に目を輝かせて話しに加わる。

「そうなんですよ、逆むけを容赦なく食べるんです。セキセイインコなんか、特に好きですよ。

手に乗せてやると、指の逆むけをグチグチかじりながら、横の爪までゴリゴリ噛み付き始めるんです。

『こら、爪は剥がんぞ! そこまで食べるな!』って、怒ってやります。もう、とんでもないですから・・・。フフフ・・・」

「えっ!? 逆むけって・・・あの・・・、鳥が皮膚を食べるんですか?」

突然始まった逆むけの会話に、追いつけず戸惑っているネコ娘が、なんとか話しへの介入を試みる。二人の話しを中断させ、内容を確認しようとする。

「ねえねえ、逆むけって、人間の皮膚ですよねえ。人間の皮膚を小鳥が食べるんですか?」

「そうなのよ、好きみたい。すぐ齧りますよ。」

こういう話は、マル子のペースだ。おおよそ、妙な話やあきれる話し、眉をひそめるような話は、マル子の得意分野です。

「ふーん、ふーん・・・」

ネコ娘はもうそれ以上は突っ込む関心はないようだ。びっくりしたけど、それでもう、良いみたいである。

ところで、逆むけの話は、それ以上は盛り上がらず、
あとはまた彼女たちの、煎餅を齧る音が響くだけだった。

動物病院の、静かなお茶の時間・・・。
トップへ戻る
nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。