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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

爆弾を落とす部品

「シロが昨夜、亡くなりました。長い間お世話になりました。」

真夏の太陽が照りつける八月のある日、マダムMから電話をいただきました。

シロちゃんは白い雌猫です。当院に初めて来たのは16年前の八月のちょうど同じ日でした。
その日マダムがノラ猫であったシロちゃんを保護し、避妊手術に連れて来られたのです。

それゆえシロちゃんはかなり長寿で、多分17歳以上だったと、推測されます。

ところでその16年来のおつき合いのマダムが先日来られた時、初めて聞いた話しがあります。

「先生、わたしももう、歳ですからねえ。学徒動員に行かされたんですよ。」

「え? 学徒動員ですか? そんなお歳には見えませんが・・・。」

「そうですか、ありがとうございます。でも、女子高の3年から4年にかけて駆り出されたんですよ。」

「・・? 女子高の3年、4年というと、今の何年生になるんでしょう?」

「うーん、中学の3年から高校の1年生ですね。
 私は唐津にいたんですが、あそこは中島の飛行機工場があってですね、飛行機から爆弾を落とす時の部品だとかを作らされてました。」

「・・・・・」

もっとお話しを聞きたかったが、次の患者さんも待っていた為に、ほんの短い会話をしただけでマダムは帰っていかれた。

たえず空襲に脅かされながら、しかし日本国民もせっせと反撃の武器・爆弾作りに協力させられた時代でした。

言葉にすれば、わずか数行の出来事かもしれないが、戦争中の軍需工場での想い出は、マダムにはどんなに大きな部分を占めているだろうか・・・。

さて、シロちゃんがいなくなっても、マダムには元気に暮らしていただきたいと、思ったのです。
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