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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

耳の穴の秘密

「私ですね、絶対耳の中に、誰か住んでると思った時があるんです。」

晩秋の雨が続いていたある日、診察室で犬の耳掃除をしていた時です。隣にいた猫娘が、何を思ったか真顔でそんな話を始めた。

「いつだったかなあ? 高校生の頃だったのかなあ・・・。あのですね、一人で耳掻きをしていたんですよ。

そしたら突然耳掻きがぐいっと引っ張られたんです。
『キャッ!』と驚いたんですが、耳掻きが鼓膜のほうまで入って少し痛かったのを覚えています。

それで私、絶対耳の中から誰かに引っ張られたと思いました。それ以来、私密かに耳の中に何かが住んでいると疑っているんです。」

「へー、こわいねえ、もしかしたら宇宙人かなあ、そのうち飛び出してくるかもねえ。」

「実はこのことは、私まだ、お母さんにも話したことはないんですけど。」

「そうか、母親にも話してない大事なことを、僕に話してくれたんだね。」

「はい、そうなんです。」

それから、私は時々猫娘の耳を注意して見ているが、今のところ怪しい生物が彼女の耳の穴から顔を出しているのを見かけたことはない。
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