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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

2009ホノルル研修(その2)

小型爬虫類の展示室はどこも大抵そうだと思いますが、ホノルル動物園でも照明を落とした暗い室内になっています。
美しくライトアップされたガラス槽の中は、さらに緑の草や枯れ木が配置され、森の奥深くに潜むトカゲやヘビの生活環境を演出しています。

どことなく神秘的で、爬虫類のマニア達はきっとこのもの静かな神秘性が好きなのではないか・・・と思うのですが。

ところで、ひとたび展示室の裏手に回ると、そこは明るい太陽光線が十分に行き渡った、活動的な作業スペースになっています。そして3人ほどのキーパーやボランティアが動き回っていました。
入ってすぐ右手のテーブルには、野菜や果物などの細切りフードが用意され、沢山の飼料フードが並べられています。

細い作業通路には、小型爬虫類の飼育ケースもずらりと並べられ、展示室に出されている動物以外に、裏側ではまだこんなに沢山の動物たちが、飼育係の手で世話を受けているのかと改めて教えられます。

その脇でリンリンと賑やかに鳴いているのは、餌に使われるコオロギでした。ホノルルは暖かいので、昆虫の繁殖は容易と見受けました。

私は何度かここで、日本のオオサンショウウオについて、彼らから質問を受けました。
「九州にも野生のオオサンショウウオはいるか?動物園にはいるか?」という、簡単な質問です。

「ええ、福岡の隣、熊本とか大分などの山奥にいると思いますが・・・」としか、答えられませんでした。

しかし、帰国して改めて調べると、日本のオオサンショウウオは、大きな物では1m40cmにもなるような世界最大の両生類で、アメリカオオサンショウウオの2倍も大きいのだそうです。

そして九州にも、中国にも四国にも、日本では岐阜県以南にわずかに生き延びている事を知りました。

大抵日本の野生動物は、外国の同種の小型版であることが多いのですが、オオサンショウウオに限って言えばはるかに巨大であるとは、ちょっと痛快です。

このオオサンショウウオが、外国の動物園や水族館の関係者には非常に興味深い生物であることに、わたしは今さらながら気がつき、中国のパンダや、オーストラリアのコアラ、あるいは佐渡のトキのように、もっと注目してオオサンショウウオを保護していく事の大切さを教えられたのでした。

ところで、作業場の奥で、一人の男性飼育係が銀色に光る小さなスプーンを1本持って、ニコニコ笑っています。

「これは、魔法のスプーンですよ」

彼はそう言うと、傍の飼育箱からハコガメを持ち上げ、すっかり首を引っ込めたそのカメの脇にスプーンの柄を差し入れて、前足をグイグイと持ち上げるようにして掴み、その足をそのまま引き出すようにすると奥に引いていたカメの首が一緒に引き出されました。

「今、カビで肺炎にかかっているから、薬を飲ませるんだよ。」

病院のアシスタントが、注射器に用意した薬を、そのカメに数滴飲ませていました。

それにしても、彼らは何をするにも楽しそうに作業しています。いつも真面目な硬い顔しかできない私には、それだけでも教えられる事の多い勉強です。
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