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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

鉄兵からのご挨拶

病院猫の鉄兵です。
皆様には、長い間可愛がって頂き、誠にありがとうございました。

2009年12月16日、本日を持ちまして、おいらは病院に別れを告げ、天国へ移りましたのでここにご報告申し上げます。
皆様、在院中は、まことにお世話になりました。

そもそもおいらが当院に来ためぐり合わせは、聞くところに寄れば誰かが生まれて間もない頃に、病院の玄関に捨てたのがきっかけだったそうです。

たしか兄弟たちはその後みんな貰われて行ったのですが、おいらだけなぜか残ってしまった次第でして。

「仕方ねえか・・・」

院長がそうぼやいて、ちょっぴりおいらの心は傷つきました。

その後、あてがわれた部屋はすこぶる狭かったのですが、食うには困らず天敵もおらず、医療費はただということで、まあまあの生活だったかなと思います。
とにかく18歳まで長生きできたのは、ストレスが少なかったからだと思います。

看護士達にも随分可愛がってもらいました。
いえ、ただの一度も家に招いて貰った事はありませんでしたが、弁当の残り物をおすそ分けしてくれたり、おやつを買って来てくれたりしました。

院長の家にはデボンレックスの夢太君が生きていた頃、一、二度お邪魔しましたが、どうも窮屈ですぐ逃げ帰ってきました。

今度は天国で、また夢太と遊べるでしょう。あいつも友達が少ない猫でしたから、おいらが来たと分かるときっと喜んでくれるでしょう。

居候だから、あんまりわがままを言っては申し訳ないと思い、献血にも、実習生の注射の練習にも積極的に協力しました。

そのせいか、「こんなにおとなしい猫は珍しい!」と、よく褒めてもらいました。

院長も、「おまえのようにいい猫は、なかなかいないぞ」と、よく頭を撫でてくれました。

高齢になってこの秋、皮膚癌がわかり、胸も病んで具合が悪くなった頃、おいらは院長に、

「おいらも、洗礼を受けたいんだが・・。」

と頼んだのですが、院長は

「うん、いい考えだ。だけど、どうかなあ・・・、猫が洗礼か・・・友達の牧師に頼んでみてもいいけど、多分首をかしげて断られるんじゃないかなあ。」

と、腕を組んで考え込んだのです。

まだ教会では、猫の洗礼は、前例がないそうです。

「お前、何か悪い事したか?」

「ああ・・・、爪で玄関の壁紙引っ掻いて、石膏ボードをぼろぼろにした。それから、スタッフの弁当をくんくん匂いを嗅いで、端っこをぺろぺろ舐めた。

あと・・・せっかく洗ってたたんでいたバスタオルを、かき回して、毛だらけにした。

時々、玄関の花壇に入って、植えたばかりのパンジーを蹴散らした。
それから、食器にいつもウンチした。」

「そうか、けっこういろいろやってるなあ。だけど、お前、水嫌いだろ? 洗礼は水かけられたり、水に浸けられたりするんだぞ、どうだ、洗礼の代わりに、僕がお祈りをしてあげよう、それで我慢しろ。」

「院長のお祈りじゃあ、ちょっと心もとないなあ。・・・大丈夫かい?」

「ああ。まかせとけって。

 『神様、鉄兵が長生きできてありがとうございます。
 十月から、やばい病気にかかっていますが、本人も最近は気弱になりいろいろ反省しております。

どうぞ、イエス様の赦しと、永遠の命が猫にもありますように。
              アーメン』

どうだ、これでいいか?」

「ふん、これで良いかどうかは、おいらに聞かれてもどうしようもないんだけど・・・。まあ、ありがとうよ、一応礼を言っとくよ。」

とまあ、そんな会話をしたのが院長との最後で、その未明においらは天国に引っ越したわけです。

どうも、いなくなる者が長々としゃべっちまったようだ・・・

それじゃあ、本当にこれで、

   ありがとうよ!   あばよー!・・・・
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