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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

テンシン

「君は、どこの出身ですか?」

「はい、長崎です。」

「はい、鹿児島です。」

当院に病院実習として来てくれるトリマーや動物看護士の卵達にお里を聞くと、意外と県外出身の人が多い。

高校を卒業して専門学校に、あるいは高校入学時から福岡に出て来たという子も少なくない。
若い人の中には、郷里でなく、福岡に出たいという人は予想以上に多いようです。

(福岡は九州の中心都市だからなあ・・・)

私も宮崎には長くいましたので各県の良さはわかっているつもりですが、福岡に住んでいるといつのまにかそういう中華思想のかけらのような自負心が、福岡人には育っているかもしれません。

しかし、先日甥の結婚式の為上京したときのことです。

渋谷の駅付近をキョロキョロしながら歩いていました。人人人の洪水です。お祭りのように、ごった返しています。

人波に押されるようにして進んでいると、ふと目に付いたのが若者向けの洋服をぶら下げている一軒のお店、そこに入りました。

そこで何がしかのものを買った時です。二十歳にならないくらいの可愛い店員さんが、笑顔で話しかけてくれました。

「今日は寒いですね。私のとこは田舎ですから、朝出てくる時すごく寒かったんですよ。」

「へえ、どちらですか?」

「フフ・・・、八王子なんです。一時間半かかるんです。」

「なんだ、八王子なら東京みたいなもんじゃないですか、そんなこと言ったら、私は福岡の田舎から出てきましたから。」

「へえ、福岡なんですか、福岡って・・・九州にあるんですかね?」

(うっ、福岡が九州にあるかどうか、この子は確信が持てないのか、そうか、その程度の認識しか福岡はしてもらえてないのか・・・)

私は一瞬失望しましたが、表情は変えませんでした。

「そうですよ、九州です。・・・それで店員さん、こちらのお店はもしかしたら、福岡にもあるんですか?」

「あっ! はい、あると思います、えーっと・・・(なにやらお店のリストを出してきて、それをめくりながら)

はい、ありますよ、テンシンにあります。テンシンコアってところに。」

彼女はさらに笑顔で答えてくれました。

「テンシン?・・・あのー、それは天神(てんじん)って読むんですよ、天神って知りません?聞いた事ないの?」

「あー、へへ・・・、そうなんですか?ごめんなさい。フーン・・・」

あくまでも屈託なく、彼女は笑っています。

私は二つ目のパンチをもらいました。

そうですよね、渋谷のお嬢さんに「福岡だ、天神だ」と言っても、全然関係ないですものね。

改めて全国から見た「福岡人」の立場を認識し、謙虚に苦笑いしつつ帰福したのです。

2月の上京秘話でした。
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