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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ビートルズを見せて下さい

寒さが戻ってきた三月のある昼下がりです。外は冷たい雨が降っています。
ビーグルのモコちゃん(仮名)が、窓際のソファーにチョコンと座り、おとなしく点滴を受けています。

そのそばで飼主のマダムSが、傍らにあったミュージックパブのチラシを眺めていました。

「ビートルズか・・・フフ、私が高校生の頃だわ。」

「あら、そうなんですか?」

「はい、高校の寮に入っていたんですけどね。ちょうどその頃ビートルズが来日してね、友達とみんなで『寮のテレビでビートルズを見せてください。』って、座り込みをやったのよ。」

「ああ、あの頃は問題になりましたからね。それでどうなったんですか?」

「へへへ・・・、見せてもらえることになったの。」

マダムはニヤッと笑いました。青春の思い出なのでしょう。

「大人になってからだけど、ビートルズでもなんでもレコードをかけると、その頃飼ってたネコがね、すぐ上がってくるのよ。そしてプレーヤーのターンテーブルに乗りたがるの。」

「ああ、きっと回っているからでしょうかね。」

「そして、針は飛ぶし、傷はつくし・・・いつもあのネコは上がりたかったわ、アハハハハ・・・。」

「そうなんですよね、レコードはすぐ傷がつくんですよね。」

「でも、音が柔らかいのよね、レコードは。今でもこーんなにレコードを持っている友達もいるし。知り合いにビートルズ好きがいるから、行ってみようかしら。」

「でも、そこは口の悪いマスターがいるから、負けないようにしないと駄目ですよ。」

「あらそうなの? そしたら私も、誰か口の悪い友達を連れて行こうかな・・・。」

そんな話をしている間も、モコちゃんはおとなしく座っていました。

外では雨が、少し上がりかけています。
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