SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

僕に犬をあげるね

(あら、あの子ったら、犬を連れたおばちゃんと話してるわ)

若いマダムは、スーパーで買い物しながらドアの方を見ました。出入り口前で小学校の低学年の男の子が、見知らぬ婦人と話しながら小さな犬の頭をなでています。

マダムは手早く買い物を済ませ、スーパーを出てきました。

「お待たせね、○○君。あら、そのワンちゃん、どうしたの?」

「うん、おばちゃんがね、あげるって。」

「えっ! あげるですって? そんな、そんなこと本当に言ったの?」

「うん、あげるって。」

「うそ、こんな子に、勝手に持たせて、あげるですって!

 それで犬を置いていったわけ、信じられない、本当なの?」

マダムはびっくりしました。

もう呆れて、開いた口がふさがりません。呆然としたまま、しばしそこに立ち尽くします。

しかし、いつまで待っても、あのご婦人は戻って来そうにありません。

(どうしよう・・・・)

何も知らない犬は、尻尾をふりふり男の子とじゃれています。

マダムは途方にくれました。よっぽどここに置いて帰ろうかとも思いましたが、それではこの犬が可哀想です。

「家には、猫もいるから飼えないけど、とにかく連れて帰ろうか。もう、暗くなるし・・・。」

・・・・・・・

「・・・・というわけで、昨日から犬の世話をしているんですけど、ダニがいたから薬を下さい」

ある日、そう言いながら、若いお母さんが病院においでになりました。

話を聞いて、スタッフもびっくりです。それにしても私が感心したのは、たいして不満も言わずに、精一杯犬の世話をしながら、行き先を考えてあげている、マダムの優しさでした。

世の中には、無責任な人は残念ながら屡いますから、それに憤懣をぶつけていても、解決にもいい気持ちにもなれません。

でも、それより、そんな賢くて優しい対処の尽くせる人の姿に深く感心させられると、心が温かく嬉しくなります。

「人が自由に生きる」とは、

本当はこのようなことの出来る力を、さすのではないでしょうか!?
トップへ戻る
nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。