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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

介護の明暗

「先生、高齢で寝込んでしまったストームを世話していたら、昨日は腫れた足からドクドクと膿が川のように流れ出てきたんです。もうすごいショックでした。わたしどうしたらいいのかわかりません・・・。(ボロボロとマダムは涙を流して泣かれる)

もうこんな思いをするのなら、わたしは二度と犬は飼いたくありません。先生、どうして世話したらいいんでしょうか?(さらに涙があふれ出る・・・)」

黒いラブラドールの女の子ストームちゃんは16歳半です。優しくて元気なワンちゃんでしたが、年月の流れには勝てず、だんだん痩せてきて、とうとう寝込んでしまいました。

数日前から足の腫れに気がついていましたが、おそらく感染があったのでしょう。マダムが世話をしている時に破れて膿が出てきた事が、大変ショックだったようです。

お嬢さんと二人で来られ、泣きながら訴えられました。

その日はお話しだけだったので、しばらく時間をかけてゆっくり話し込みました。

後日ストームちゃんを連れて来てくれました。
すっかり肉が落ち細くなって診察台に寝ているストームちゃんを治療をしながら、今の状態で具体的にしてあげられることや、介護の方向性を家族で選択することなど話し合いました。

それから一週間、マダムは人が変わったように随分晴々とされ、先日はご家族4人でワイワイ楽しそうに連れてきて下さいました。

点滴の間も、ムッシュが

「こいつはね、子犬の頃咬みつきがひどくてね。会社に行くでしょ、そうするとキーボードを打っている僕の手を見て同僚が『おまえ、それ、どうしたんや!』って、聞くんですよ。

『うん、犬に咬まれた。』

『どこの犬や?』

『うちの犬よ』

『おまえそれ、飼犬に手を咬まれるちゅうことやなあ、ワッハッハ・・・・』

なんてね、そんな時期がありましたね。」

と、ニコニコしながら言われると、マダムもすかさず

「そうそう、それでね、わたしも随分咬まれたからね、もう腹に据えかねてね、ある日手に咬みついて来た時に、握りこぶしを作って、それをストームの口に入れてグイグイ押し込んでやったんです。

そしたら、びっくりしたんでしょうね。それ以来、ぴたっと咬まなくなったんです。」

「そうよねえ、最初は甘噛みでも、結構痛くてねえ、ウフフフフ・・・・」

二人のお嬢さんも一緒に笑いながら、ストームちゃんの点滴を見守り、昔話に盛り上がっていました。

「先生、わたし『犬を飼う時は、老犬の介護も楽しむつもりで』と言われて随分気が楽になりました。

それでですね、昨日なんか、随分食べて、びっくりしました。もう二度と食べきらないと思っていたのに。」

マダムはそう言って、笑ってくださった。

寝たきりの大型犬の介護という、当面の課題は全く同じなのです。
同じなのですが、気持ちの切り替えで、同じ重荷が随分楽しそうにできているご家族の様子を目の当たりにし、私もびっくりしました。

マダム一人で抱え込まなかったのも、大きな理由でしょうけど、本当の所はどこが切り替わったのがポイントでしょうか?そこのところを詳しくお聞きしたい思いでした。
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