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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

バッタのためだから

「先生、この前ですね、私があるビルから出ようとしたら、そこにバッタが一匹いるのを見つけたんです。」

お茶の時間に、カメ子が話し始めた。

「うん、うん」

「それでですね、私(何でこんな所にバッタがおるんやろう?)って思いながら、バッタをビルの外に出してやろうと思って

バッタの目の前で私の左右の足を八の字に揃えて、『おらっ! おらっ!』って跳びながら、バッタをじりじり自動ドアの方に追い立てていったんです。

「ふーん」

「そして、もう少しで外に追い出せるという所まで来て自動ドアが開いたら、そしたらバッタが急に私の足に飛びついてきたんです。

私びっくりして、『ギャアッ!』って叫んで、バッタを振り払おうとして蹴るまねをしたら、靴が脱げてポーンと向こうの歩道まで跳んで行ったんです。

(しまった!)
と思ってあわててケンケンしながらドアを出たら、その玄関のすぐ横でタバコを吸っている人がいたんです。その人、ぽかんとして、怪しいものを見たような目つきで片足立ちの私を見るんです。

私あわてて、手を振って『違う違うサイン』をしながら、『バッタを追い出していただけなんです。バッタです。』

って、言い訳したんですが、その人怪訝な顔をしたままで、(とりあえず女だし、危害を加えそうにないからまあいいか・・・)
って態度で、そのままタバコを吸ってました。

ヘヘヘ・・・私、自分の靴を拾って、そのまま立ち去りましたけど、あの人私が何て言ったのか、きっと意味がわからなかっただろうなあ・・」

カメ子はさも口惜しそうにそう言うのでした。
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