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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

台所に立つ

「先生、またカツオの点滴をお願いします。」

ムッシュHがネコのカツオ君を連れておいでになりました。カツオ君はもう17歳くらいになるキジ色の高齢ネコです。
若い頃ムッシュの事務所にご飯をもらいにやって来ました。

ネコ好きのムッシュは気に入ったのでしょう。自宅に連れ帰り、以来屋敷の中で自由に暮らしているようです。

昨年くらいから便秘体質になり、便の掻き出しと腎不全の点滴をするようになりました。

「いや本当は僕は犬が好きなんですよ。でもね、母も家内もネコが好きだから、一緒には飼いにくいでしょう。だからずっとネコだけで、犬は飼う機会がないままです。」

「あら、そうだったのですか!?」

「はい、だけどね、このネコのおかげで、母もこのネコの事を心配して『病院に連れて行け』とか気にかけながら、かえって元気にしてるみたいです。

家内もね、ネコが好きですよ。彼女は持病があるからあまり動けないけど、僕が今買い物して帰って、夕食の用意もしてるし・・。」

「わあ、偉いですね、ムッシュ夕食を準備しているんですか、仕事も忙しいでしょうに。」

ムッシュは税理士さんで、事務所を開いている。以前はソフトボールクラブで活躍もしていたらしいが、最近は家族を気遣い家事をされているとのこと。

「前はよく外で食べて帰っていたけど、今は買って帰れば美味しい物がたくさんあるからね。」

「そうですよね、外で飲む事を考えれば、安くてたくさん買えますからね。」

「そうですよ。それに、汚れ物のあとかたずけもしてね。」

「へえ、皿洗いもするんですね。立派と言いたいけど、ムッシュまあ、これまでの罪滅ぼしですね。ハハハハ・・・」

「ハハハ・・何をいいますか!いいえ、ぼくは前から真面目ですからハハハ・・・。」

「まあ、でも犬が好きなら、これからは健康のために散歩も出来るし、番犬にもなるし、犬を飼う事も考えていいんじゃないですか?」

わたしは本当にそう思った。

広いお家です。ネコも犬も飼えるし、夕方の室見川の土手を愛犬と散歩するのはきっと気持ちがいいだろう。

「うちは子供がいないから、これからは夫婦二人で助けあっていかないといけないからね。」

そんなムッシュの言葉が、風の吹く土手を犬と散歩しているムッシュの姿を想像する中で、夕焼け空と溶け合いました。
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