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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

出勤途中の川で(前半)

「ルンルンルン」

カメ子が自転車をこぎながら、通勤していた朝です。

「おや、あれはなんだろう!?」

小学校の横を流れている小さな川があります。半分どぶ川に近いような用水路です。
その川に、動く生き物がいました。

カメ子は自転車を止め、注視します。
犬です。動きはぎこちないですが、汚れた犬です。

(きゃあ、可哀想。落ちちゃったのかしら・・・、上がれないのかなあ・・・、上がれないよね、これじゃあ・・・。

助けてあげたいけど、仕事に遅れると院長に怒られるし、引き上げる道具もないし、あんなに汚れているし・・・

第一、知らない犬は、抱きかかえるとよく咬みつくのよね。)

カメ子は自転車のハンドルを握ったまま、犬を見つめて考えました。彼女の横を通り抜ける車のお尻を眺めながら、しかし、彼女の心はすぐに決りました。

(仕方ないよね、助けてやらないとね。)

(警察は助けてくれるかな?)
駄目でもともとで電話したら、来てくれるそうです。

(ラッキー、良かった!)

その間に、犬を助け上げる準備を進めました。
金目の物は何もないのですが、とりあえず貴重品の入っているバッグを持って行かれないか心配しつつ自転車を止め、川へ降りる梯子のついているところへ行きます。

「今、行くからね、待っててね。」

コンクリートに付いた鉄の梯子を一段一段下ります。

ピチャッ!

水量はわずかとは言え、下りれば靴もジーンズもびしょびしょになります。

グチョッ、グチョッ、

滑らないように足もとに気をつけながら犬に近づきます。

「逃げないでね、今、助けるからね・・・」

カメ子に出来る精一杯の優しい声をかけつつ、泥まみれの犬に近寄るのでした。

                 (続く)
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