カチカチ
「うーむ、また来てるぞ!」
外環状線近くの一軒家です。その家の主(あるじ)が、玄関先で空を見上げて睨んでいます。いや、空を見上げてと言うより、電柱の上を見上げてと言う方が正確でした。
家の横にすっくと立っている電柱が1本。高さ十mほどのそのてっぺん近くに、一羽の鳥がいるのです。
「カラスめ、この前、追い出したばかりなのに・・・」
主は、口をへの字に曲げてブツブツ言いました。
カラスと言っても、真っ黒のカラスではありません。黒と白の模様のカチガラスです。カササギとも呼ばれるようです。
資料によれば、日本では佐賀平野近辺にしか生息しない国の天然記念物だそうです。
でも、その家の主にとっては、カチガラスなどとしゃれた名前で呼ぶ気がしないのでしょう。カラス野郎・・・で十分なのです。
というのは、カチガラスは以前もその電柱の上に巣を作ったのですが、その材料に針金やハンガー等を使うのです。そしてそれらがしばしば落下して、真下に止めている主の車を直撃するのでした。
「これはたまらんぞ。」
朝起きたら、車の周辺に落ちている金属を拾い、車の傷をチェックします。
「こりゃあ・・・撤去してもらわんとなあ・・・」
愛車を見、電柱の上を見上げ、ついに主は決心しました。
どこに電話したかは知りませんが、高所作業車が出てきてすべて取り除き、カチガラスのマイホームは、潰え去りました。
「カチカチ、カチカチ・・・」
負けたカチガラスが、勝ち勝ちと鳴いています。
「ごめんよ、カラス君、悪気はないんだけどなあ。」
夕暮れ時、主はカチガラスに謝りながら、お家に入りました。
ところがです。
ところがカチガラスは、ほどなくまた同じ場所に巣作りを再開したのです。
飛んで行っては1本、飛んで帰っては1本、巣材を咥えて来ては運び込みます。
「やや! また作り出したのかよ!」
家の主は空を見上げて渋い顔をしましたが、しばらくして針金が車に落ちてくるようになると、我慢できなくてまた電話を入れました。
「カラス君、街中で作るからだよ、どこか他所へ行けよ。」
再びすっきりした電柱を見上げながら、主は言いました。カチガラスはまたもや無くなってしまった巣を悼むように、「カチカチ、カチカチ」と鳴きました。
さて、それからしばらくしてからでした。なんだか屋根の上が騒がしいなあと思った家の主が出てみると、なんとカチガラスが三度(みたび)巣作りを始めていたのでした。
「あちゃー、また作るのかい?・・・・・」
家の主は電柱を見上げながら、ため息をつきました。
しかし、そんな下界の思惑をよそに、カチガラスは空の上の論理で悠然と構え、どこかへ飛び立っては、また巣材を咥えて帰ってきます。
「カチカチ、カチカチ・・・・」
うむ、カチガラス、三回の表の攻撃に入ったようです。あくまでも、勝ち越しを狙っているようです。
さあ、家の主は投球を変えるのでしょうか?
カチガラスの学名は、ピカピカジャポニカと言うんだそうですけど、
これぞ日本の栄光!・・・みたいな頑張りやの名前ですね。
外環状線近くの一軒家です。その家の主(あるじ)が、玄関先で空を見上げて睨んでいます。いや、空を見上げてと言うより、電柱の上を見上げてと言う方が正確でした。
家の横にすっくと立っている電柱が1本。高さ十mほどのそのてっぺん近くに、一羽の鳥がいるのです。
「カラスめ、この前、追い出したばかりなのに・・・」
主は、口をへの字に曲げてブツブツ言いました。
カラスと言っても、真っ黒のカラスではありません。黒と白の模様のカチガラスです。カササギとも呼ばれるようです。
資料によれば、日本では佐賀平野近辺にしか生息しない国の天然記念物だそうです。
でも、その家の主にとっては、カチガラスなどとしゃれた名前で呼ぶ気がしないのでしょう。カラス野郎・・・で十分なのです。
というのは、カチガラスは以前もその電柱の上に巣を作ったのですが、その材料に針金やハンガー等を使うのです。そしてそれらがしばしば落下して、真下に止めている主の車を直撃するのでした。
「これはたまらんぞ。」
朝起きたら、車の周辺に落ちている金属を拾い、車の傷をチェックします。
「こりゃあ・・・撤去してもらわんとなあ・・・」
愛車を見、電柱の上を見上げ、ついに主は決心しました。
どこに電話したかは知りませんが、高所作業車が出てきてすべて取り除き、カチガラスのマイホームは、潰え去りました。
「カチカチ、カチカチ・・・」
負けたカチガラスが、勝ち勝ちと鳴いています。
「ごめんよ、カラス君、悪気はないんだけどなあ。」
夕暮れ時、主はカチガラスに謝りながら、お家に入りました。
ところがです。
ところがカチガラスは、ほどなくまた同じ場所に巣作りを再開したのです。
飛んで行っては1本、飛んで帰っては1本、巣材を咥えて来ては運び込みます。
「やや! また作り出したのかよ!」
家の主は空を見上げて渋い顔をしましたが、しばらくして針金が車に落ちてくるようになると、我慢できなくてまた電話を入れました。
「カラス君、街中で作るからだよ、どこか他所へ行けよ。」
再びすっきりした電柱を見上げながら、主は言いました。カチガラスはまたもや無くなってしまった巣を悼むように、「カチカチ、カチカチ」と鳴きました。
さて、それからしばらくしてからでした。なんだか屋根の上が騒がしいなあと思った家の主が出てみると、なんとカチガラスが三度(みたび)巣作りを始めていたのでした。
「あちゃー、また作るのかい?・・・・・」
家の主は電柱を見上げながら、ため息をつきました。
しかし、そんな下界の思惑をよそに、カチガラスは空の上の論理で悠然と構え、どこかへ飛び立っては、また巣材を咥えて帰ってきます。
「カチカチ、カチカチ・・・・」
うむ、カチガラス、三回の表の攻撃に入ったようです。あくまでも、勝ち越しを狙っているようです。
さあ、家の主は投球を変えるのでしょうか?
カチガラスの学名は、ピカピカジャポニカと言うんだそうですけど、
これぞ日本の栄光!・・・みたいな頑張りやの名前ですね。
2011-05-17 15:00
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