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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

タマエの涙

「さあ、今日は年に一度の教会の日だわ。」

五月のある日曜日です。
キリスト教精神で設立されている当院では、院内に神棚も置かないし正月の初参りもしませんが、年に一度だけ、スタッフ達は礼拝への参加が行事になっています。

院長の願いとしては、「命」は死んだら終わりなのか、それとも人にも動物にも神の国があるのかという深遠な問題を、たまには考える機会にしてほしいのですが、スタッフ達の関心事はたいがい(その日は昼ごはんをどこで食べようか?)・・・という問題に取り組んでいる顔つきです。

しかしその日は、ちょっと違いました。
なぜなら、今、問題の福島第一原発からわずか3,9kmの位置に建っていた教会の佐藤彰と言う牧師が来てお話されたからです。

教会の建物は津波に耐えました。しかし、とにかく危険だから故郷から立ち退きなさいと、住民全員無理やり追い出されます。そして避難所へ行きます。

教会員の中には津波で亡くなった方もおられましたが、助かったたくさんの方々は、それぞれ避難所ですごしていたそうです。

けれども雪の降る季節に、当初食べ物もありません。三日間食べられなかった方もいたそうです。着る物も毛布も無く、寒さと空腹で、三日間眠れなかった人もいたそうです。

あまりにも過酷な避難所で、体力が持ちません。人工透析を必要な方や、骨折入院している90歳を越えた方、肺炎の方、そういった方々のいく人かがが避難所で亡くなります。

これは、サバイバルだ! 今はとにかく命を助けなければならない。そう考えた佐藤牧師は、バスをチャーターして高齢の人、重症の人が助かるように移動を図るのですが、それを聞いて教会員の希望者も加わって、全部で60人くらいで旅が始まるというそういう話などもありました。

いえ、今も旅の途中で、埼玉県のキャンプ施設で、共同生活が続いているとのことでした。

詳しくは省略しますが、礼拝が終わってスタッフの顔を見たら、タマエの顔が濡れているんです。

「おい、タマエ、どうした!?顔が濡れてるぞ!」

「いえ、先生。わたし、感動して泣いてしまったんです。」

「そうか、君はそんなに感動したか・・・。良かったな。」

タマエの目は小さな目で、どこにあるのか普段はわかりにくいのですが、その日だけは水の流れている上流辺りに目があるというのが、確認できました。

とにかく意義のある、日曜日でした。
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