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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

カエルの小銭入れ

「先生、昨日ですね、近くのショッピングモールに行ったんですが、妹がそこで小銭入れをなくしたんですよ。」

朝から雨が降り続く梅雨のある日、マル子がそんな話を始める。

「小さな緑色の小銭入れで、カエルのデザインで、ちょうど口のところががま口になっているんですよ。妹は、『本屋さんで落としたかな?』って言ううんですが、よくわからなかったんです。

『どうせもう出てこないだろうから、いいわ』って言うんだけど、私、念のため本屋さんに行って聞いてみたんです。
そしたら『受付案内所に行って、お尋ね下さい。』って言われて、そっちへ行ったんですよ。

それで案内所に行ったら、奇麗な女の人が座っていて、私が聞くとニッコリ笑って、『カエルの小銭入れですね、はい、私が受け取っていますよ。』って、言われたんです。

『持ってこさせますから、お待ち下さい。』と言われて待ってました。
それから『中に何が入ってますか?』と聞かれたんですが、妹のだから、私はっきりわからなかったんですが、色、デザイン伝えた通りだったんで、渡してくれました。

中を見たら、小銭はちゃんと入っていて、私、優しい人もいるんだと、感心しました。」

「へーえ、ちゃんと、届けてくれる人がいるんだね。」

前回のこのコラムでも、脱走柴犬を交番に連れて言ってくれる通りがかりの親切な人たちのことをお話させてもらいました。

このような正直な人の多い国に生きているということは、それだけで経済成長率とか国民総生産とか、そんなことでは測れない目に見えない幸せを享受しているんだと思ったのです。

成功するとか、上に行くとか、得をするとか、そういうこととは別の虹色の暖かい世界が、見えた気がしました。
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