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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

お腹の虫

「気をつけないとね、ノラだから突然動き出すよ。」

「はい、そうですね。」

昼休みに入り、私はカメ子とノラ猫の避妊手術の準備にとりかかった。メスの黒猫で一歳くらい。

「先月子どもを生んだので、また生む前に。」と、ムッシュAが腕に咬まれ傷を作りながら捕まえて、ようやく連れて来たノラ猫です。

麻酔をかけ、手術台に載せ、点滴につなぎ、気管チューブをつける。

「さあ、毛刈りと消毒をしようか。」

「はい、・・・あー先生、お腹が空きました。すみません、グーッと、鳴るかもしれませんよ。」

猫の足を手術台に固定しながら、カメ子が言う。

「まったく、よく鳴るお腹だね。恥ずかしくないの?」

「もう、慣れました。平気です。ただ、患者さんの前では、やっぱり恥ずかしいですけどね。」

「患者さんの前では恥ずかしいけど、僕の前では平気だというのか、君は?」

「はい、先生に聞かれてもなんともありません。そのうち、おならもするかもしれませんよ、ハハハ・・・」

(むむ、そこまで言うのか、カメ子は・・・、こいつは、僕を人とは見てないんだな。
同居している犬かサルぐらいにしか、思ってないんだろうよ。)

さて、貧血著しくて、一時は手術を中止しようかと考えたノラ猫ちゃんでしたが、ムッシュが手を怪我してまで連れて来たことでもあり、今回を逃すともう連れてこれないかもしれないとの強い要望で、避妊手術は予定通り行われました。
幸い無事終了し、カメ子のお腹もあまり鳴らないままでした。
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