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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

新しいメガネ

「タマエ、メガネが少しずり落ちてくるね、フレームが甘くなったのかな?」

フレームが緩んだからか、それとも鼻が低いからかはわからないが、タマエのピンクの可愛いメガネがちょっとずり下がってくるようだった。

「そうなんですよ、最近すべるんです。もうだいぶ、つかっているからですね。

 それでこの前天神に行った時、あるビルが閉店セールしてたんですが、その時3000円だと聞いて、すごく安かったんで思い切って新しいメガネを注文しました。その時、お店にはたくさん人が来ていて、店員さんは忙しそうでした。」

そんな話をしているところへ、マル子もちょうどメガネを作っているらしく、口をはさむ。

「ヘヘヘ、私も最近、原の店で、メガネを作りましたよ、昔と違って今は随分安くなりましたからね。」

「へー、マル子も作ったの?どうして?近視の度が進んだの?」

「いえ、古くなったからです。検査したら『レンズの度は、同じで良いですよ。』と、お店の人に言われました。」

「え、同じ度で、メガネを作るの!?」

(そうか・・・、女の人は、「古くなった」という理由で新しいメガネを作るのか。うーむ、男は、使える限りは同じのでたいがいすませちゃうからね。何年も古いのをかけるから、そういう視点はなかったなあ・・・)

人生はたえず発見です。メガネを買い換える理由が、男と女は違うのでした。

それから数日して、タマエが透明感のある新しいメガネで、颯爽と出勤してきました。

「やや、新しいメガネだね。ステキだ、似合ってるよ。」

一応褒めてあげないといけないのは、私も心得ている。

「そうですか、フフフ・・・」

そう言われて、嬉しそうに笑う。
いや、実際ピンクもよく似合ったが、新しいメガネもあか抜けしている。

午後のこと、タマエがカルテを持ってきて、私に聞いた。

「先生、この患者さんから、お薬の依頼がありました。準備していていいですか?」

「どれどれ、・・・ああ、うん、お願いします。」

カルテから目を離して、ふとタマエを見ると、彼女は何だか自信に満ちた顔をしていた。
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