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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

5人姉妹

「この頃バルモアちゃんの後ろ足が悪いんだけど・・・」

13歳になる猫を連れてマダムTが、来院されました。

「どっちだったかな?こっち? いやあっち? いややっぱりこっちだったかな? あははは・・・わかりませんが、とにかくどっちか足が悪かったんです。」

アメリカンショートヘアーの大きな男の子です。診察台の上で、尻尾をピンと上げ、すりすりしてくれます。

「はて、どっちの足だろう? ・・・マダム、レントゲンを撮ってみましょうか。」

診察台の動きを見ている範囲では、あまり右左違いはありません。
レントゲン室に入ると、急にバルモアちゃんは暴れ出して、撮影はちょっと難航しました。
それでも検査の結果、大きな異常や病気はなさそうです。

「うむ、高齢猫の慢性関節疾患かもしれませんね。多分、本人にしかわからないような痛みがあるのでしょう。今は一見、普通に動いていますけど・・・」

相談の結果、鎮痛剤で様子を見ることにしました。

治療の合間に、マダムが話してくださいました。

「私は今、この子と二人暮しです。今年の正月に母が亡くなったから・・・。

いやね、もう十数年、母とずっと同居して介護していたんですよ、それが去年の暮れにちょっと病院に罹って診てもらったら、
『肺炎は起こしてないと思うよ。大丈夫と思うけど、もう一度どこそこの病院で診てもらいなさい』
と、言われてですね。

そちらへ連れて行ったら、『肺炎です』と言われて・・・、その前まで普通に話してたんですがねえ、

まさか亡くなるとは思わなかったんですが、元旦にね。92歳でした。
そしたら、もう一匹の猫が、すぐ4日に亡くなってですね。

だから今は、この猫と二人暮しですよ。

こんな猫でも、私が外から帰ったら『お帰り』と言って迎えてくれるから、心が和みますよ。フフフ・・・」

そういう話を聞くと、なおさらなんとかバルモアちゃんを元気にしてあげたいと思うのは、獣医でなくてもお分かりいただけると思います。

「ご兄弟はいらっしゃるんですか?」

「はあ、わたしは5人兄弟ですが、みんな女なんです。」

「えっ! 女ばかり5人ですか、わあ、じゃあ、次は男か、次こそ男かと、親は思ったでしょうね。」

「ハハハ、そうなんですよ、だいぶ親戚からも言われたらしいですけどね。でも、女ばかりでした。

だけどね、あとになってみれば、女ばかりの方が、いいんですよ。よく親元に集まるし、親の面倒も見るし・・・どんな集まりでも誰かが交代で台所に立つしね。」

「ところでマダムは、何番目ですか?」

「私? 私は5番目です。アハハハ・・・」

「そうですか、5番目なら、何かと得だったかも知れませんね。」

どうして末っ子が得なんだ!と、異論のある方もいらっしゃるでしょうが、ここは猫を見ながらそれとなく話した二人の会話の趣という事で、聞き流してもらえたら幸いです。

ちょっぴり腎臓機能が低下している事もわかったバルモアちゃんですが、まだまだ元気ですごしてもらわないといけません。

マダムのためにもね。
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