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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

一人ぼっちのクリスマス

「あ、待って! ねえ、お母さん、置いてかないで!」

「チーコごめんなさい、もう無理なの。本当にごめんね。」

一頭の可愛いチワワが病院に持ち込まれました。白い毛の女の子。小さな体ですが6歳です。もう子犬ではありません。飼主のマダムが体を壊し、入院が長くなったのです。

これ以上飼育を知人にお願いし続けるのも、もう無理でした。

(どうしよう、手放しきれない・・・)

一か月悩みましたが、やっぱり飼育は無理だと観念しました。それで病院に里親探しを依頼されたのです。

「お母さんもあなたを置いていきたくないけど、どうしようもなくなったの。」

「・・・・お母さん・・・・」


それ以来、チーコは動物病院の里親探しのケージにおとなしく入って、待合室で皆さんに見てもらっています。

「え、どうしたんですか?このチワワ・・・まあ可哀想、飼えなくなったんだって。」

「ふーん、おー、よしよし・・・」

皆さんが、優しく声をかけてくれます。


「運命を受け入れる。
 くよくよしても、昔に戻れるわけではない。

 人を恨むんじゃない。
 みんな自分のことで精一杯生きているんだ。

 あなたはこれまで愛されてきたし、
 今もあなたを心配してくれてる人がいる。

 もしあなたが新しい境遇を受け入れるなら
 あなたの新しい歴史は、輝きを増す。」

そんな臭い説教をしなくても、チーコは元気です。
フードは好き嫌いするし、散歩でトイレをせずにケージで排泄してくれるし、最近は病院の番をするつもりか、入ってきた犬に吠えるようにもなりました。

「チーコ、もう少し静かにしてくれないかな。」

「わん、わんわん、」

左側から舌をいつもぺろっと出して、すまし顔です。

みんなが楽しそうにするクリスマスの聖夜に、一人ケージに入っていても、チーコは自分に負けていません。
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