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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ハルちゃんの闘病

闘病というのは、人生の大きな出来事ですね。いや、それは動物だって同じです。

マダムIがマルチーズのハルちゃんを初めて連れて来られたのは、ハルちゃんが10歳の時でした。お腹に出来た皮膚炎がきっかけです。その時乳腺に腫瘍があったのですが、まだ小さかったので御主人の希望で切りませんでした。

それから半年ほどして、思いのほか腫瘍の成長が早かったため、これは切っておいた方がいいと決心がつき、卵巣と一緒に手術に臨んだのでした。

処置は予定通り行われ、悪性の細胞も見つかりましたが、良好な結果を得ることができました。

「良かった、良かった!」

ご夫妻もホッとして笑顔がこぼれます。

「さあ、帰ろうね!美味しい物が待ってるよ!」

ハルちゃんはまた孫娘のように可愛がられて幸せな日々を過ごしました。

それから一年半たった、暑い夏が巡ってきた頃です。今度はハルちゃんにリンパの病気が見つかりました。

(おかしいわね、お腹の調子が悪いのかしら。下痢をしたり、食欲が落ちたりするわね。)

マダムがお連れになったハルちゃんの下顎のリンパ節が両方、大きく腫れているのが見つかりました。

「まあ、・・・・」

以前、病院にお勤めだったマダムには、人間にとってもその病気が厄介なものであることはご存知でしたから、覚悟を決めて治療に取り組みました。

抗癌剤を使いながら、しばしば吐いたりしながらも、しばらくの間病気は確実に消退し、再び元気になります。半年間の治療に耐え、ハルちゃんの綺麗な白い毛は、一時院長の髪のように薄くなりましたが、またすぐに再生が期待されました。

それから二か月間、注射から解放されてハルちゃんは家庭犬の幸せを享受しました。

残念ながら再発はちょっと早めに訪れました。

「・・・まあ、やっぱり、そうですか・・・。この前は、頑張ったからねえ。きつかったけどね、やっと終わったと思ったのに・・・」

ご夫妻は相談の上、二度目の抗癌剤療法は選択しない道を選ばれました。

それからできるだけ対症療法をしていましたが、四月になってハルちゃんは桜が満開の頃、静かに亡くなりました。

青い空の下で春の陽射しを浴び、翌日マダムの腕に朝まで抱かれていたそうです。13歳半でした。
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