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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

通り抜ける自信

事務室で乳腺手術をした犬の病理検査報告を読んでいた時です。

カメ子が言いました。

「この前、帰宅中のことなんですが・・・、小学校の横に川が流れているでしょう。その川沿いに狭い道がありますよね、結構車も通ってるんですが、

その日は、一台の車が離合しきらなくて、動けなくなってたんですよ。対向車は道幅の広めの所を見つけて、そこで待ってくれているんですが、そこを通り抜ける自信がないんでしょうね。

じっと動かないんです。

通りかかった人が心配して、

『オーライ、オーライ、大丈夫だから前に進んで・・・』

と、声をかけてくれているんですが、その車は進みきらなくて、とうとう退がり始めたんです。

だけど、その頃には、すでにそれぞれの車の後ろには、二、三台詰まってて、バックできる状態じゃないんです。

それを見ていて、あんなに怖いなら、こんな狭い道は入らない方がいいのにと、思いましたよ。」

「うーん、そうだね、狭い道はね、離合がたいへんだからね・・・。」

私も時々、離合に自信がなくなるときがあります。

大きな工事車両がせり出している道、あるいは荷物の積み下ろしをしているトラックの脇をすり抜ける時、

(むむむ、あの幅を、通過できるかな?)

と、危ぶむ時が。

でも大抵は、ギリギリで通れるもんです。サイドミラーを収納したり出したりしながら、かつがつやりすごすことが。

やってみないとわかりません。
本当に通れない時もあるでしょう。

でも、そこでじっとしていても、解決しないのです。

これは動物の治療も似たようなことがあると、思います。

手術に耐えられるかどうか、危ぶんで、思いあぐねていると、時間とともに事態はもっと厄介になって行きます。

決心をつきかねて迷っている時間は、しかし病気にタイムがかかっているわけではありません。それは患者にとっては下流の滝に向かって流されている筏に乗ったような時間なのです。

どうするか、早めの決断も必要です。

そして、そのタイミングを見極めるのが、案外難しいのが、動物医療です。
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