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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

お菓子の包み紙

「どうぞ、お大事に。頭を打っていますから、安静に。」

「はい、ありがとうございました。」

夜の九時半頃でした。交通事故だということで電話が鳴りました。
その後すぐ、大きなボストンテリアが、ご主人に抱きかかえられて、あわてて連れて来られました。

さては、容態は如何に!?
私たちも、緊張して待ちうけていましたが、

ところが当のボストン君、診察台で、クンクン臭いを嗅ぎながら歩いています。呼吸も比較的落ち着いています。

右目の眼瞼内出血と顔全体の打撲の形跡程度で、とりあえず様子を見れそうでした。

ご夫妻が安心した顔で、ボストン君を抱いて帰られました。

「良かったですね、たいしたことなさそうで。」

「うん、本当に。交通事故は一歩間違えば、大惨事だからね。」

「あー、お腹が空いた。何か食べよう!」

いっきに緊張が緩んだカメ子は、私服に着替えると、帰る間際に更衣室の缶から、戴いた東京スカイツリーのお土産、クリスピー・チョコのお菓子を一個取り出すと口に放り込みます。

「お疲れさん!」

「お疲れ様でした!」

・・・・・・

さて、翌朝の事です。

診察室で私とマル子が犬の耳掃除をしていると、

「あれ、こんなところに、お菓子の包みが捨てられてる。

・・・ははあ、・・・きっとこれは、カメ子さんが、昨夜

『お腹が空いた』

と言って、帰る間際にお菓子を取り出して食べ、ここに包み紙を捨てたんだわ。」

マル子が空っぽのゴミ箱の片隅に、くしゃくしゃのお菓子の包み紙が一枚だけ捨てられているのに目を留め、ニヤリと笑ってつぶやきました。

・・・むむむ、女の直感と想像力、恐るべし!ずばり的中です。

さては男達は、みんな、この鋭い観察力に、やられているんだ・・・。

院長は耳掃除を続けながらも、ひそかに冷や汗が一筋、背中に流れるのを、感じたのでした。
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