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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

出勤途上の子猫

「ウワアッ! 危ない!」

当院に昔勤務していたことのあるマドモアゼル・ナオが、運転中の朝でした。

チョコチョコと急に道路に出てきた幼い黒猫を、対向車線のトラックがブオーンと、轢いて行くのが目に入ります。

「アアーッ! もう駄目だわ!」

ゴロゴロゴロと転がる子猫。
キキーッと彼女はブレーキを踏んで車を止めると、注意して道を渡り、子猫のところに駆け寄ります。

フラフラしている黒い小さな子猫。すぐ抱き上げると、そのまま当院へ担ぎ込みました。

「せんせーい! 猫が車に轢かれました。診て下さーい!」

「おや、君か。朝からどうした? 車に轢かれた? どれどれ・・・」

彼女が差し出したのは、黒くて表情の良くわからない、手の平に乗るくらいの子猫。でも、フラフラと立っています。

「先生、私、見ちゃったんです! 目の前で、轢かれるところを、もう駄目と、思いました。」

「ふーん、・・・・・、・・・・・、本当に轢かれたの?」

「そうなんです。ごろごろって・・・」

診察台の子猫は、目をしっかり開け、意識は正常、体はユラユラしているが、四つの足に怪我もなさそうだった。

呼吸音は、比較的落ち着き、エコーで膀胱を見たが破裂はしてなさそうだ。

「トラックにね・・・風圧に巻き込まれただけか、そうでなければ・・・」

「先生、私、仕事に急いでるので、置いていきます。治療代払いますから、診といてください。じゃあ、失礼します、すみませーん。」

三分もしないうちに、彼女は行ってしまった。

それにしてもラッキーな子猫だ。輪禍から助かった上に、どうやら彼女が飼主になってくれそうな状況だ。

そんな一方で、昨日は、開いている門扉からとび出したチワワが、ちょうど通りかかった運送屋さんの車に轢かれて、亡くなる事故が起こっている。

交通事故の怪我の軽重は、紙一重です。

強運な子猫だが、どうやら気も強そうだ。
足に出来た皮膚病に薬を塗る我々に、遠慮なく噛み付いてくるのを見ると、はたして我々人間に助けてもらったとは、1%も思ってないらしい。

子猫にあるのは、自分の世界だけ・・・。
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