SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

豊富な話題

夜の八時ごろです。マダムKとご友人のマダムⅩが、猫のランちゃんの点滴にお出でになりました。

ランちゃんはまだ比較的若いのですが、少し腎臓が弱いので、毎週点滴に通われています。

お二人は昔からの友人のようで、いつも二人でランちゃんに付き添いながら、点滴の間中、四十分間、おしゃべりに花を咲かせます。

若いお二人なので、旅行の話し、食べ物の話し、動物の話、テレビの話、話題は豊富で尽きる事がありません。

私なんかはおしゃべりが苦手ですから、もし毎週のように会ってたら話すこともあろうはずが無く、きっと沈黙が支配するでしょうから、マダムたちの話題の豊富さはうらやましい限りです。

のべつ幕なしにしゃべり続ける関係と言うのは、このような二人を言うのかも知れません。

その日も二人で賑々しくおしゃべりしながら自動ドアを開けて入ってこられました。

待合室に腰をおろしながら話し続け、お呼びしたら二人でしゃべり続けながら診察室で無限の会話が続きます。

「この前ね、うちの猫が、ウンチをしたいみたいなんだけど出ないのよ。お尻からちょっと見えてるんだけど、いつまでたってもなかなか出ないままでさ・・・・」

「えー、そうなの! いつもなの? えー、それで、それで・・・」

すっかり話題に夢中です。

ランちゃんは診察台に上がっているのに、まったく獣医の私の方を見てもくれないもんですから、少し寂しくなって、口を挟みました。

「あの・・・、すみませんが、診察室に入ったら、少しは私としゃべってもらえますか?」

「えー、あー、ハハハ、すみません。あの、先生にも聞いてもらおうと思ってたんですが、そういう時は、どうしたらいいんですか?」

「便ですか? そういう時は、お尻の奥から腸をつまむようにして、圧迫してあげると出るかもしれませんよ。」

「あー、そうなんですね、今度やってみよう! で、今日は点滴右左、どっちですか?」

「えーと、今日は・・・左側です。」

「はい、じゃあ、お願いします。あ、先生、私、明日スマップのコンサートに行くんですよ! え?場所? ドームです。今日と明日と、二日間、あってるんですよ!」

・・・・・・・

私が、会話に食い込めたのは、そこまででした。

その後はまた二人待合室に座り、24時間テレビのような対談が、無口な獣医の暗い病院を、明るく賑やかにしてくれたのです。

明日は、楽しいコンサートになりますように!!
トップへ戻る
nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。