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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

書類を調える

「おや、うっかりしてた! 薬物施用者許可免許の更新期限が三日前だぞ。」

動物病院で使う薬品には、処方する為の都道府県の免許が必要なものもあります。二年に一度の更新期限が目の前でした。もし無免許で仕事を続けたら大変な事になります。

私は十二時を待って職場をとび出すと、十二時半まで受け付けてくれる近くの医院に駆け込みます。

「すみません! 健康診断お願いします。」

健康診断と言っても、血液検査とかレントゲンとかが必要なわけではありません。
この人は、精神異常の言動がないか、薬の使用を許可して大丈夫かどうかを診断してもらうだけです。

具体的には面接して、目つき、顔つきがおかしくないか?落ち着きがなくていかにも怪しくないか等を判断してもらうだけのようです。

医師も実際、このような診断書は苦慮するようです。よほど症状がなければ見抜けないでしょう。

警官に一般人を面接させて、不審人物かどうかを当ててもらうのと同じくらい難しいのではないか?・・・などと、私は医師に同情してしまいます。

「あなた、大丈夫ですよね?」

「はい、私は大丈夫です。」

そんな会話をして、所定の診断書に判を押してもらいます。

その足で、保健所まで出かけ、その他の書類と併せて4枚を提出しました。

(やれやれ、これで一安心)

と、思ったときです。

「あの、ちょっと、待ってください!」

玄関を出て車に乗ろうとしていると、後ろから今しがた書類を受け取ってくれた綺麗な女性が長い髪を風になびかせて追いかけてきました。

「ああ、よかった、まにあったわ」

(うわあ、女性から呼び止められた。どうしよう。お茶でも飲みませんかと言うのかしら・・・)

心がちょっとハートマークになりながら、

「はい、何でしょうか?」

「あのお、ここの印鑑が、法人ではなく医師の印鑑が必要なんです。それと、こことここが、日付は西暦でなく免許証の記載とおりの日付にしてください。

それと、ゼロの時は無記入でなくゼロと書いてください。それと・・・・」

なんと、いつも簡単に提出していた書類に、あちこち書き直しを命じられた。

「えー、そんなー、内科医院の印鑑じゃだめなんですか?そんなこと、わかるわけないじゃないですか!また行って、先生の個人印をもらえと言うんですか?」

私は多少抵抗を試みたが、彼女はあくまでもにっこり、書き直して再提出してくださいと言って譲りませんでした。

まあ、役所に融通の利かない面もあるが、明らかな誤記入個所もあるので、こちらに落ち度がありました。

私はすごすごと引き返し、その日は簡単な書類の簡単な過ちをぶつぶつ言いながら、修正したのでした。

仕方がありません。出直しです。人生には、見苦しく食い下がるより、いさぎよく出直したほうがいいこともあるのです。

反省して、出直しましょう。
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