SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

バスを乗り間違えて

「あら、どうしてまっすぐ行くのかしら?」

その日カメ子は大学病院に受診のため、病院行きのバスに乗っていました。眼の検査のため紹介状をもらっていたのです。

ところが、手前の交差点で曲がるとばかり思っていたバスが、そのまま直進し、結局バスは大学病院でなく、学生の登下校する正門の方に着いたのでした。

(しまった! このバスは、大学病院行きじゃなくて、大学行きだったんだわ!)

あいかわらずの、あわてものぶりです。それにしても、医師との予約の時間にあと20分しかありません。

(えーと、ここはどの辺なのだろう? 病院までどのくらい離れているのかしら? 多分、こっちの方角が、大学病院だとおもうんだけど・・・)

慣れない場所に着いてあせりを感じたカメ子は、直感に従い走り始めます。

(大丈夫かな? 間に合うかな?)

右や左にそびえる巨大な校舎を見回しながら走り、突き当たったら右に曲がり、曲がり角を見つけたら左に戻って、なんとか向こう側へ突き抜けようとします。

(えー、わからないわ、・・・こっちでいいのかな?)

段々自信が無くなったカメ子は、立ち止まって考えましたが、バスで酔って気分が悪かった上に急に走り出したので、ますます具合が悪くなりました。

(ハア、ハア、ハア、・・・あー、どうしよう、もう間に合わないかな、困ったなあ、あっ、あの人に聞こう!)

「すみません! あの、大学病院はどちらの方角ですか?」

「えっ? サクラ病院! サクラ病院はね・・・」

「あ、いえ、違います! 大学病院です、ダイガクビョウイン!」

(あう、勘弁して、サクラ病院なんて全然聞いてないじゃない。)

残り時間が10分になり焦っているカメ子は、折れそうになる心を支えて、笑顔を頑張って作り、聞き直します。

「ああ、大学病院かい、それなら、ほれ、そっちでいいよ。」

「あ、ありがとうございます!」

バタバタバタバタ・・・・・(カメ子の足音)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と、そういうわけで、昨日は大変でした。フフフ・・・、もう、バスが交差点を直進した時はどうしようかと思いましたが、必死で走ったから何とか間に合いました。ホッとしましたよ。


こうしてカメ子は、人生を二倍楽しんでいる。

普通の人が何気なくすごす時間を、彼女はドキドキハラハラ、焦ったり、喜んだりしながら、思い出の多い日々をすごしているのです。
トップへ戻る
nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。