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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ほら、書いてあるよ!

どんな業界でも同じでしょうが、獣医学も日進月歩であり、獣医師もいつも勉強に追われています。

ポストをあければ毎日ダイレクトメールが届いており、およそ毎週のようにあちこちで講習会や大会や学会が開かれているのです。

その全てに参加はできないのでテキストだけ取り寄せて勉強したりしていますが、年に何度かは出かけなければなりません。

先日も腹部膵臓を見るための超音波検査機の講習会があったので、土曜日の夜から県外に出かけて、ビジネスホテルに泊まって翌日に備えていました。

朝のことです。
ホテルの1階が朝食会場とのことで降りて行きました。小さなレストランにやけに男性ばかりたむろしていました。

(なんでこんなに、男ばっかりのホテルなんだ?)

と、いぶかるほどでしたが、まあ自分も男ですから文句も言えません。

会場は一応バイキングになっていたので、さっそくベーコンだとかソーセージだとかサラダだとか玉子焼き、それに煮物とか美味しそうなのを自分の皿に乗せました。

さて、あとは熱い豆腐の味噌汁に刻みネギとワカメを入れ、その隣に一夜干しでしょうか、アジの開きの瑞々しいのがあったので、それもお皿に載せました。

(よし、これでいい。さあ、喰うぞ・・・。)

トレイを抱えて私が窓際の座席に向かおうとした時です。

ツンツン! と、私の横腹をつつく人がいました。

(えっ、誰? こんな知らない町で)

はたと振り向くと、本当に知らないおじさんです。

ガッチリして角刈りの男性。もし睨まれたら怖そうなタイプの男性が、私のお皿を覗きこみながら、言いました。

「あんた、その魚は、焼くんだよ。ほら、焼かないといけないって、書いてある。」

「えっ?」

男性に促されてテーブルの魚を盛った平ザルに目を移すと、なるほど、確かに書いています。

「この魚は、生です。横の魚焼き機に入れて、4,5分焼いてください。」

ちゃんと日本語で、但し書きが添えられています。ちっとも気がつきませんでした。

(あら、本当だ! えらく瑞々しいと思ったけど、そのはずだ。生だったのか。)

「ご親切に、ありがとうござい・・・」

私が振り返って男性にお礼を言おうと思った時には、彼はもう出て行った後でした。

ただそれだけのことですが、感謝な忠告でした。

(おかしいなあ、生臭いなあ、新鮮だからかな?)

なんて思いながら生で食べて、万が一後で腹痛でも起こしていたら、旅先で面倒な事態になったかもしれません。

顔はいかついけど、わざわざ見も知らぬ私に声をかけてくれて、一言教えてくれたあの男性に、感謝です。

その日は一日、「有り難い、嬉しいなあ」・・・と思って過ごしたことでした。
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