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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

虎のイビキ

私の友人は、「卒業後三十年たっても国家試験に落ちる夢を見る」と言っていたことは、以前も紹介させていただきました。

職業によって、怖い夢のパターンがあるのでしょう。獣医なのでしばしば私が見る怖い夢は、やはり動物関連です。動物園で働いていてたくさんの猛獣が逃げ出し、うろうろするライオンなどから必死で隠れる夢です。

大抵、獣が逃げ出し空いている檻に逃げ込んで、安全を確保しようとするのですが、そんなときに限って出入り口が閉まらなかったり、奥の部屋にすでにライオンがいたりして、恐怖は続きます。

きっとパイロットだったら、着陸に失敗する夢とか、船員なら船が沈没するする夢とか、見るのかもしれませんが・・・。

先日も私は、怖い夢を見ました。夢の中で私はどこかの構内で働いていたのですが、二頭の虎に遭遇したのです。

「うわっ、虎だぞ! みんな急いで出入り口を閉めろ。鍵をかけろ!」

廊下をウロウロする虎を発見し、急いでドアを閉めようとするのですが、やはりうまく閉まりません。

手間取っているうちに高窓からのっそりと入って来た二頭の虎は、棚のところでねそべって

「ガウウウ・・・、ゴロゴロ・・・・」

真っ赤な口を開けて喉を鳴らしながら、じっとこっちを見ています。いつ、襲いかかってくるかわかりません。

「お、おい、何か武器はないか? えっ? ライフルがある?
それだ、それだ、それを使おう。他に方法がない。」

いくら獣医でも、絶滅危惧種、希少動物の虎より、自分の命を絶滅から救う方が先決なので、私はためらわずに銃をとりました。

「バーン!」

銃声はしたのですが、中からドロドロの薬液が飛び出し、虎のお腹が溶け始めます。

「え? 何だ? これは。でも、一応役に立った・・・。」

私は固唾を飲んで虎の様子を凝視していました。虎は動かなくなったのですが、「ガウウウウ・・・、ゴロゴロゴロ・・・・」と、いつまでも唸っています。

「おかしいなあ? もう、息は出来ないはずなのに・・・」

(どうしよう、どうすればいいのか・・・)

不審に思って、逡巡していたのですが、ガウウウ、ゴロゴロゴロ・・・の唸り声だけはいつまでも続くのです。

(どうしてだ? ・・・どうしてだ?・・・)

その時、フッと布団の中で、私の目が覚めました。そして、理由がわかりました。

隣に寝ている家内のイビキが、ガウウウ、ゴロゴロと、響いていたのでした。

いえ、本当に・・・・。
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