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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

散歩につきあう

日曜日の夕方近く、外出をしました。病院を出て妻と地下鉄の駅まで向かっていると、住宅街の古い道筋、前方に黒いプードルを散歩させてゆっくり歩くお一人のマダムが見えました。

「あ、マダムKとリリちゃんだ!」

高齢で太り気味のリリちゃんが、家と家に挟まれた狭い道路を、側溝に沿うように実にそろりそろりと歩いています。

「歩けないと言われてたけど、だいぶ歩けるようになったみたいね。」

妻が嬉しそうに分析します。

昨年から飲み始めた甲状腺の薬が効いてから、段々動きが増えるようになったようです。

リリちゃんを散歩させているマダムも八十の半ばとお聞きしています。冬の優しい陽の光りを浴びながら、両者とも足もとを気をつけながらゆっくり歩いています。

と、その時です。彼女達の後ろから、ササササッ、サササッと、怪しげな動きをしながらつけている一匹の三毛猫が見えました。

道を渡るとブロック塀沿いにチョコチョコ、立ち止まり、前方の犬を見ては、またチョコチョコと、進みます。

どう見てもその猫は、たまたま通りを横切っているようには見えません。どうやら後をつけているようです。

(むむむ、年をとって弱った犬を襲う凶暴な猫が稀にいるらしいが、さてはリリちゃん、危うしか!)

変事が発生すれば、直ちに救援しようと私達は足を速めましたが、猫はいっこうに襲いかかる気配はありませんでした。
とうとう私達は、マダムに追いつきます。

「マダム、リリちゃんは、だいぶ歩けるようですね。良かったですね。」

「ああ、先生、はい、おかげで少しづつ、こうしてまた散歩が出来るようになりました。」

「ところで、変な猫がついてきてますけど・・・」

「はい、これもうちの猫です。昔から私がリリを連れて散歩をすると、一緒についてくるんですよ。」

「あらまあ、犬の散歩に猫が自分でついてくるんですか?」

放し飼いの猫ですから、思う存分外を歩き回っているでしょうに、何に惹かれるのでしょうか?わざわざリリちゃんの散歩に付き合うとは・・・

その三毛猫は、ジャリの敷かれた駐車場に寝転んで顎を掻いたり、少し歩いては畑のそばに座り込んでは耳を掻いたりしながら、速度調整をしてテンポの遅い散歩に付き合っているようです。

小春日和の午後、こうしてマダムとリリちゃんと三毛猫ののどかなお散歩を、拝見できたのでした。
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