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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

遅い救急車

「この前ですね、うちの家のすぐ前で事故が遭ったんですよ。」

診療の合間に、マル子が話してくれた。

「青年がバイクに乗っていて、飛び出してきた猫を避けてひっくり返ったんです。

近所のおじさんがすぐ駆け寄って、『誰か! 救急車を呼んで!』って、叫んで。

それからうちのお父さんも、駆け付けたんです。
(マル子のお父さんも救急車に乗る救急隊員ですが、その日は非番のため自宅にいました。)

『ここはどうですか? 痛みますか?』

『ひー、いてて、いてて・・・』

『うーむ、もしかしたら、骨が折れてるかもしらんね。』

青年を道端に座らせて、応急手当てをしながら救急車の到着を待ったんです。

集まった近所の人みんなで、道の向こうのほうを何度も見ながら、救急車が来るのを待ちました。

(まだかなあ?・・・、まだかなあ?・・・)

みんなの思いは、一刻も早く救急車が来てくれるようにという願いで一杯でしたが、なかなか来ません。しかし、そばに私の父がいるので、言い出せず、みんな黙っていたんです。

でも、みんなが黙っているので、沈黙の中ついに私のお父さんが自分で言いました。

『救急車、来るのが遅いなあ…』
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