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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

爪に穴をあけろ

毎日クマゼミが鳴く夏の盛り、ある日仕事をしていると、なんだか左手の親指の先に違和感を感じました。

(あれ? ぶつけたかなあ? ・・・)

気に留めずそのままにしていたら、一日ごとにじわりじわりとその違和感がかすかな痛みに変わってきます。

 (まだ、治らないなあ・・・、何だろうこれ・・・)

 それでも無視しているうちに、だんだんはっきりした疼痛になり、さらによく見ると、爪の根元が膿んだ様に緑になってくるではありませんか!

 (あちゃ、感染したかな。でも、こんな場所にどうして?)

初めての経験です。抗生物質をせっせと飲むと痛みは半減しましたが、それ以上の改善は見られません。指を使うたびに、シクシクと弱い疼痛が。

(ううーむ、こうなったら、あれをするしかないか!)  

あれとは、昔、カメ子に聞いたこと。すなわちカメ子の爪の中が膿んだ時、病院でキリキリと爪に穴を開けられて膿を出したという話を、思い出したのです。

「もう、怖くて怖くて、ドキドキしていました。」

その時は笑いながら話を聞いていましたが、まさかそれが自分の身に降りかかろうとは。

爪にドリル穴を開けるなんて、怖くてとてもできそうになかったのですが、何日も痛みが続くと、やらねば治らないか?と言う気持ちが強くなります。

23ゲージの注射針を取り出し、しばらくじっと見つめます。

(うーん、本当にこれで、自分の爪に穴を開けきるかなあ!・・・)

爪に穴が開いて、針先が肉に刺さったらどんなに痛いでしょうか。怖気づいてしまいますが、しかし、どこかの外科に行っても、きっと同じことをされるかもしれません。

「さあ、今から、穴を開けるからね。ちょっと、我慢してね。はい、どうですか?大丈夫だね。はい、進めますよ、さあ、だんだん深くなったよ、もうすぐだよ、はい、もうすぐ、もうすぐ、下に到達するよ、痛かったら、痛いと言ってね・・・・こら、動いたらだめじゃないか。じっとして。ほら、もうすぐ、痛いからね。看護婦さんたち、この人をちょっと、押さえて。ほら、もうすぐだよ・・・」

どんな恐ろしいドクターがギリギリとするかもしれないと想像すると、きっと、自分でした方がましです。

私は改めて水色の23ゲージの針先を睨んで、いよいよ覚悟を決めました。

机の上に左手の親指を乗せ深呼吸をすると、爪の根元から3mmのあたりに位置を決めます。白いかまぼこ模様が見えている円内に針先を立て、ゆっくり、キリキリ、キリキリと軽い力で抑えながら注射針を回し始めました。

                                  ー  続く - 

 

 

 


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