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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

狙われたカメ子

「じゃあ、お疲れさん!」

「はい、お疲れ様です。・・・あ、先生、この前ですね、私帰り道に近所のスーパーに寄ったんですよ、」

一日の仕事を終え、疲れを覚えながらもほっとして病院のドアのカギを閉めていた時です。星空の下でカメ子が立ち止ると、急に思い出したように、話し始めました。

「それで、自転車を店の入り口に止めてですね、ユニフォームとカーディガンの入って袋を籠に入れたまま、私は夕食の買い物をしに行ったんです。すぐ戻ったんですけど、そしたら、確かに紐をキュッと締めていたはずの、自転車のかごの中の袋がパカッと開いていて、中を探られた様子があったんです。

私は間違いなく、かっちり締めていたはずですから、これは誰かが貴重品を狙って、物色したんだと思いました。」

「ふーん、そんなことがあったのか。いやだねえ、自転車の籠をさぐるなんて、たいしたものは、置いてないだろうにね。」

「その人も、中を見回して、何もなかったんで、がっかりしたかもしれませんね。それにしても、気味が悪いです。」

白衣の天使のユニフォームなら賊も持って行ったかもしれないが、猫のおしっこの臭いがする動物の毛だらけの服では、舌打ちしてすぐ離れたに違いない。

まあ、何も被害が無かったので良かったですが、いずれにしろ油断大敵です。ささいなことであれ犯罪の餌食にならないよう、自分で気をつけねばならないのは、確かなようです。

カメ子の話しを聞きながら、昔、私がまだ小学生だった頃、「人を見たら泥棒と思え」ということわざをさかんに耳にしたことを、ふと思い出した。

なぜだろう、なぜそんな言葉が、行き交った時代だったのだろう。たぶん、戦後のまだ厳しい復興期だったからだろうか。盗まないと生きていけない人たちも、多かったのかもしれない。

なるほど、・・・考えてみれば、

経済大国とか、先進国であることを誇るより、「今まで盗っ人を見たことない」とか、「刑務所が無い」という国であることを目指したほうが、私たちは幸せな暮らしを享受できるのではないかしら・・・。

 

 

 

 

 


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