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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

カラスよ、おまえなのか!?

「先生、これ、何でしょう? 瓦みたいなのが、玄関に置いてましたけど。」

「え? 何々? あら、瓦だね。どうしたの?」

「はい、玄関の階段のところに、ちょこんとありました。」

「えーっ、どうしてそんな物が、・・・まさか!?」

私はあわててドアを飛び出し、玄関先に行った。

「ほら、ここの所にあったんです。」

猫娘が指さす。私はそこからすーっと屋根へ視線を上げていった。

「やややっ、あそこだ! ぬぬぬっ! 瓦が割れてる!」

玄関横にある犬の入院室、その大屋根の真ん中の瓦が一部割れて、その半分が落ちてきたようだ。

「どうしたら、あんな真ん中の瓦が、一枚割れるんだ!?」

理由がわからないが、下の防水シートがむき出しになっている。これは早く直さないと、雨が降り出したら大ごとだ。空は曇り模様です。

私はあわてて駆け戻ると、知り合いの工務店に電話をした。

幸い数時間後、屋根屋さんが見に来てくれた。若い青年だった。

「ああ、あそこですね。勾配がきついなあ。」

「あの、どうして突然、屋根の真ん中の瓦が割れるんですか?どうしたら、こんなことが起こるんですか?」

私は納得がいかないので、屋根屋さんに聞いた。

「うーん、よくカラスが物を咥えていて、空から落とすことがあるみたいなんですけどね・・・。」

「カラスがですか、むむむ・・・」

誰も目撃者がいないし、ここでカラスを犯人に決めてしまうのは、それこそ思い込み捜査だが、私の頭では次の瞬間には、黒ずくめの悪者ガラスが、空を悠々と飛び去る姿が、浮かんできた。

「あほー、あほー」

「むむむ、なんと迷惑な奴らだ!」

 何の証拠もないのに、もう犯人は絞り込んでしまった。とはいえ、どうしようもない。仮に現場を目撃していたとしても、もう一度飛んできたカラスが果たして同じカラスかどうかも、見分けがつかないだろう。彼らは完全犯罪ができる。

「むむむ、どうしようもないのか・・・」

人間様だと普段威張って、動物を憐れんでるが、翼を持って大空を自由に飛んでいるカラスから見たら、人間なんてくだらないねと、思っているかもしれない。

うーむ、それにしても、世の中ってのは、いつ何が空から降って来るか、わからない危険な世界だったのか。

隕石でも、雷でも、火山弾でも怖いが、爆弾やミサイルは遥かに怖い。何しろ人を殺そうと狙って落ちて来るのだから。

カラスの落とし物くらいの心配で済む日本であることを、とりあえず感謝しなければ。


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