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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

鉄兵です

病院猫の鉄兵です。寒くなりましたね。

おいらも、年をとりました。最近は下顎に病気が出てものがうまく噛めず、苦労しています。


院長は、おいらの生まれた年をはっきり記録していないので、なんとおいら自身も年齢を知らないのですが、(だれでも、親から聞くものですからね。)もう18歳くらいだそうです。

そういうわけで、この頃は、病院の巡回もしんどくなりました。椅子に飛び乗るのに、一呼吸いります。

おっと、いけねえ。
こんな愚痴をこぼすために、登場したんじゃねえんです。

実は院長が、ちょっと急がしそうで、今週はパソコンの前にいないので、代わりにおいらがちょいと、出ばったまでです。

11月も終わり、みなさん、いえ、犬や猫のみなさんですよ、
ついでに飼主の皆さんも、
お風邪をひかないようにね。

さあ、あたりは暗くなったし、
看護士達は、ぱたぱた走り回っているけど、

そろそろ、おいらの飯にしてくれないかなあ・・・
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無いなら描こう

朝のカメ子の部屋です。
出勤を控えて、カメ子が散らかった部屋をバタバタと動き回っています。

「さあ、腹ごしらえは出来たし、モーニングコーヒーも飲んだわ。 ノノのお昼ご飯は・・・・ふー、よし、これで足りる。

エアコンのリモコンはどこかな? ノノが踏んでスイッチが入らないようにと・・・。

今、何時かしら? えーと、7時50分か・・・、
どうしよう、34分のバスだと、ちょっとぎりぎりできわどいし、やっぱり12分にしようかな。

時間があるかなあ・・・眉毛を描いて行きたいけど、どうしよう、乗り遅れたら嫌だから、早めに行って向こうで描こうかな・・・。
あー、でも、見られたら恥ずかしいから、やっぱり一応眉毛を描いとこう。」

大急ぎで、カメ子は眉毛を描きます。適当に。

ところがです。彼女が職場に着くとそんな日に限って病院が開く30分も前から、患者さんが待ち構えていました。

「あ、良かった!看護婦さん、お願いします、交通事故なんです!」

「え! 交通事故? わ! 血だらけですね、はい、どうぞ中へお入りください。」

カメ子はあわてて正面玄関を開け、事故のワンちゃんを抱えたままのムッシュN夫妻を招き入れました。

ちょうどそのところへ、院長も入ってきます。
さてその後は、暴れる犬を押さえながらも緊張の声が飛び交わし、鎮静剤をかけたり、手術が始まったりしたのです。

それから2時間ほどして、とりあえず大事にいたらずワンちゃんの容態は落ち着きました。
肘の太い血管から吹き出ていた出血も止まり、ワンちゃんは静かに寝ています。

「先生、私今朝ですね、眉毛を描かないで、こっちに来てから描こうかと迷ったんですけど、やっぱり描いてきて良かったです。
あの状態では、眉毛のないまま、仕事に突入でしたから。」

カメ子が笑いながら言う。

「そうか、君は眉毛を描かないと無いのか。大変だね。」

果たして上手に描いてきたのかどうか、私はこっそりカメ子の顔を見る。
まあ、たいした出来ではないが、不利な戦力で、けな気に戦う指揮官のように頑張って描いている。努力賞くらいはあげたいと思う。

それにしても、無い眉毛を描いて来て良いのなら、

「無い髪も描いたって良いじゃないか!」と言いたくなるのは、私のひがみかしら・・・?
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病院からの電話

「ハッちゃんが夜になってなんだか震えてるんです。大丈夫でしょうか?」

夜の9時も近い頃、マダムUから電話をいただいた。チンの子犬のハッちゃんはその日の昼下がり、混合ワクチンをうったばかりでした。

「震えているんですか?夜は食べましたか?そうですか。食欲があれば、様子を見れる範囲と思いますが、でも、良ければ連れて来られたらどうですか?」

「はい、じゃあそうします。すぐ参りますので。」

まもなくタクシーに乗ってマダムが来られました。ハッちゃんは竹で編んだ籠に入れられています。
診察室に入ったハッちゃんは一見、元気そうにしています。マダムの下げた籠の縁に前足をかけて身を乗り出し、尻尾をパタパタ振りながら嬉しそうにこちらを見上げていました。

「うむ、吐き戻しはありませんね。では、お熱を測りましょう・・・。」

私は子犬を診察していたが、どうも飼主のマダムのほうが顔色が悪いように思えました。

「あの、マダムは・・・大丈夫ですか?」

「はい、それが・・・、」

マダムの表情が一気に崩れ、急に気弱な目になりました。

「・・・それが、たった今、私が出て来る時に病院から電話があって、妹が危ないからすぐに来てくださいと言われたものですから・・・。」

言い終わらないうちに、マダムの目が潤んできました。

「えっ、それは・・・。
 あの、ハッちゃんをこのままお預かりしましょうか?そのほうがいいんじゃないですか?」

ご高齢のマダムは一人暮らしです。以前からたった一人残った身内の妹さんが入院中で気がかりだとお聞きしていました。

「そうですか、よろしいですか、それじゃあ、そうさせて頂いたほうが私も・・・。」

「はい、具合の分からない子犬を一匹家に残しているのは心配でしょうから・・・」

そのままマダムはタクシーに乗って病院に向かわれました。

さて、そういうことでハッちゃんを預かっていたのですが、それから三日ほどたってマダムはおいでになりました。

「どうも、お世話になりました。・・・妹は、あれからちょっと持ち直しましたが、昨日『一度自宅に戻りたい』と言うので、連れて帰ったところ、まもなく・・・姪の腕にもたれるようにして抱かれて亡くなりました。」

「・・・・・・」

(肉親、姉妹を見送ったら、どんなに寂しいだろうか・・・。
今夜、マダムは大丈夫かな?)

私はそう案じましたが、幸い最近来たばかりの子犬のハッちゃんが、きっとちょっぴりでもマダムを慰めてくれるでしょう。

死の深みに絶望を感じた時に人を慰めてくれるものは、人の優しい言葉であったり、無心な動物のまなざしであったり、

あるいは、信じている永遠の命の希望であったりするのでしょう。
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耳の穴の秘密

「私ですね、絶対耳の中に、誰か住んでると思った時があるんです。」

晩秋の雨が続いていたある日、診察室で犬の耳掃除をしていた時です。隣にいた猫娘が、何を思ったか真顔でそんな話を始めた。

「いつだったかなあ? 高校生の頃だったのかなあ・・・。あのですね、一人で耳掻きをしていたんですよ。

そしたら突然耳掻きがぐいっと引っ張られたんです。
『キャッ!』と驚いたんですが、耳掻きが鼓膜のほうまで入って少し痛かったのを覚えています。

それで私、絶対耳の中から誰かに引っ張られたと思いました。それ以来、私密かに耳の中に何かが住んでいると疑っているんです。」

「へー、こわいねえ、もしかしたら宇宙人かなあ、そのうち飛び出してくるかもねえ。」

「実はこのことは、私まだ、お母さんにも話したことはないんですけど。」

「そうか、母親にも話してない大事なことを、僕に話してくれたんだね。」

「はい、そうなんです。」

それから、私は時々猫娘の耳を注意して見ているが、今のところ怪しい生物が彼女の耳の穴から顔を出しているのを見かけたことはない。
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ゴチン!

「今日ですね、病院の蛍光灯を買おうと思って、電器の卸屋さんに寄ったんですよ。」

お茶の時間、みんな揃った時にうつむいてマル子が話し始める。

「それでですね、用事が済んで駐車場から車を出そうとしたんですが、偶然両側にうちの近所の電気屋さんや知り合いの電気屋さんが来てて車を止めてたんですよ。

それで、右側の電気屋さんの車にも、左側の電気屋さんの車にも
『こんにちわ! こんにちわ!』
って頭を下げてあいさつしながら、そろりそろりと車をバックさせてたんです。

見通しがきかなかったんで、ゆっくり下がったんです。そして大きくお尻を右に振りながらバックし、お店の向こう側の、反対車線側に車を持っていこうとしたんですが、大きく回りすぎて、車の左後ろをガードレールにゴチンとぶつけたんです。

(うわあ! 当たった!)

シマッタと思ったんですが、電気屋さんに見られてるので、そのまま走り出して、こっちに戻って車の後ろを見たら、けっこうやっちゃってました。トホホ・・・(ションボリ)」

「え!? それは大変だね。 へこみはだいぶ大きいの?」

「ウインカーのところが割れてるし、多分・・・」

病院の蛍光灯を買うために、カメ子の自慢の愛車を傷つけることになりわたしは大変気の毒に思いました。

「うわあー、車をぶつけたら、私なら何日も心にしみのように暗いものが残るわ。」

と、カメ子が同情する。

「うん、そうね・・・」

と、マル子がうなずく。

「ショックだよね、・・・でも、僕はバンパーを擦った時、二日であきらめをつけたけどね。」

私が慰めにならない慰めを言ったが、猫娘がすぐに

「いや、私なら修理するまできっと諦めきれないです。」

と、断言するように語る。

こうしてその日のお茶の時間は、マル子に哀悼の意をささげ、しんみりとした空気の中、黙って皆お茶をすすっていた。

(・・・でも、道の向こう側のガードレールにぶつけたのは、やっぱり大きく曲がりすぎだよ・・・)

と、みんな思いながら、静かにお茶を飲む。

・・・・・・・
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職場のカラス

「カラスの小屋の下に、ノラが子猫を産んだんやが、避妊手術するとしたらいつ頃やろか?」

ある日、一人のマダムがそんなことを尋ねて病院に来られました。

「母猫なら、授乳が終われる頃がいいですが、・・・そうですね産んで50日たった頃でしょうか。ところでカラスの小屋ってなんですか?」

「ハハハ・・・、職場にね、昔カラスの雛が保護されてみんなで口に餌を入れてやって、育てたのよ。飛べないから職場に小屋も作ってもらってるの。

キャットフードをふやかして与えてね。そうしたら『オハヨー』とか、『ワンワン』とかしゃべるのよ。

よそからカラスが飛んで来ても、『オハヨー』って言うとみんな逃げていくの。

最初はガールフレンドも来ていたけど、今はもう来てないみたい、ホホホ・・・」

「へえ、雛から育てたんですか? よく育ちましたね。しかも職場に小屋を作ってもらって、すごいですね。」

「平成9年からだから、もう12年になるわよ。」

「え! カラスは12歳ですか! それは長生きですね!」

野生では生きていけないところを、小屋の限られた空間の生活とは言えカラス君、皆さんに大事にされ愛されているようです。

マダムが言われたガールフレンドが来なくなった、その理由がちょっと気になります。

青年の真っ最中なら男性は大概自分の経験を振り返りながら、(やっぱりあれがまずかったかな?とか、これがやばかったんだよなあ・・・)なんて振られた後で反省することしきりですが、さて、カラスにも反省はあるのでしょうか??

やっぱり女の子をどきっとさせるには、昔から
「君の目って、すごくきれいだね!」
って何気なくささやくのがいいと思うのですが、

・・・うーん、
最近の若いカラスには、それじゃあ笑い飛ばされるかなあ?

頑張れ、小屋の中年カラス!!
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柳川・川下り舟

先日スタッフ5人で、年に一度の遠足に出かけました。
場所は柳川、福岡市から車で1時間ほどのところにある水郷の町です。

「川下り舟に乗ろう!」

柳川と言えば川下りです。川下りと言っても急流があるわけでなく、街の中にめぐらされた水路を棹差して船頭さんが漕いでくれる中、ゆっくり情緒にひたるという趣向です。

天気は快晴、ぽかぽかと暖かい陽気が20人ほど乗った小船を満たしてくれます。

はっぴ姿の船頭さんが日に焼けた顔をニコニコさせて、掘割を案内してくれます。

「柳川城の濠は、わざと泥を入れ、水深を浅くしています。なぜかというと、敵方が馬に乗って濠を渡ろうとした時、ぬかるみに馬の足がとられて進めないように、計算されているのです。」

「ほー!なるほど・・・」
乗り合わせ舟客たちが、思い思いに連れと話をしながらも耳を傾けています。

さて船頭さんは白秋の歌碑など柳川の歴史を色々解説してくださりながら、途中でリラックスさせる為のとん知クイズを出してくれました。

はて何が出てくるのだろう?と興味を持ったのですが、これがなかなかのくせもの。
ひどい駄洒落で、私は手も足も出ず、答えを聞いて苦笑いするしかなかったのです。

ところがわが病院のホープ、猫娘が三問中のニ問をほぼ即座に答え、「おー、すごい!」と、皆さんからの拍手をいただいたのでした。

ここでクイズだけご紹介しましょう。


第一問、
 朝だけ王様になる花は何か?

第二問
 亀が持っている飲み物は何か?

第三問
 耳に咲く花は何か?

この二問目と三問目をすぐに答えたので、猫娘は船頭さんから、「彼女は頭が柔軟で柔らかい」と、たいそう褒められました。

「すごいねえ、猫娘、優秀じゃないか!」
「そうよ、そうよ、すごい!」

「へへ、本当は一問目もすぐわかったんですが、誰が言うかなと思って、黙って様子を見てたんです。」
 
「じゃあ、全部わかったのか! たいしたもんだ!」

ふだん褒められる事の少ない猫娘ですから、この時ばかりはおおいにもてはやされました。

かくして猫娘は、水の上をゆっくりとすすむ秋のどんこ舟で、つかの間の栄光に浴したのです。


え?
クイズの答えを教えろ・・・ですか?

それは言わない方が、美しい物語で終われると思いますので・・・。
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浴槽のウンチ

「まだ生理が続いていてですね、それで近所の雄犬が高さ2mのフェンスを乗り越えて、入って来るんですからね。」

犬のキイちゃんを連れて来られた時、ムッシュSは笑いながらそう言われて帰って行かれた。

「すごいですね、2mなんて・・・」

その後で、猫娘が感心したようにつぶやいて話し始めた。

「そういえばこの前ですね、うちの家なんですけど、水を抜いていた浴槽にウンチが落ちてたんですよ。

それでお母さんがまず妹に、

『あんたね!?』って聞いたら、

『はあ? ・・・バカやないと!』

でも七衛門(シーズーの老犬)は絶対するはずない、だって降りたら上がれんもん、ということで、次に弟に聞いたんです。

『はぁー? するわけなかろうもん!』

『じゃあ、お父さんは?』

『いや、それはまさかねえ・・・』

ということで、解らずじまいだったんですよ。
でもまたある日、帰ってみたら七衛門が浴槽に入っていたんですよ。

今度はウンチは無かったんですが、

『誰が浴槽に入れたと?』

でも、誰も知らないんです。その後、もう一度七衛門が浴槽に入っていたので、
『ああ、やっぱり七衛門やったんやね。』

ということになりました。でも、犬の能力ってすごいですね。」

感心したように猫娘が締めくくったが、
聞いていた者としては、風呂場のウンチについて簡単に家族を疑う君の家族関係のほうがすごいと思いました。
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