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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

メリーポピンズ事件

「ドタン、ガラゴロ、ドロドロドロ」

(!!・・・ ???)

それは私が診察室で犬を診ていた時でした。
建物の外壁に振動が走るような、くぐもった大きめの音がしました。一瞬ドキリとします。

(えっ!?何の音?)

しかし、とっさに判断がつきません。音源の推定ができないのです。振動音の続いたのは、時間にしてわずか5、6秒だったでしょうか。

(一瞬、また地震波が到達する前の異常音かとも思いましたが、ちょっと違います。外壁にバイクでも衝突して、擦るのに近い音でした。でも、上から聞こえたか、南側か北側か、それもよくわからないのです。

犬のように左右の耳をピクピクさせながら、さらに続く音を探知しようと神経をそばだてますが、もうそれっきりでした。後は静寂が訪れます。

「今の音、おかしいよねえ!? 何だろう、ちょっと見てくる。」

私は犬をスタッフに任せて、玄関に出ました。青い空が広がって陽射しが心地よい天気です。
と、駐車場で犬の入院室の前に、予想もしなかった物を見つけました。

傘です。3本あります。どれも開いたままで、風が吹くとコロリコロリ転げています。

「はあ? 何で傘があるの?・・・」

理由がまったくわかりません。とりあえず、それを回収します。

「あのね、傘があったんだ。どうしたんだろう?」

「え? 傘ですか。何ですかそれ。」

スタッフと首をかしげながら、もしかしたら!・・・と次に反対側の水路の窓を覗くと、あった、あった、そっちの側にもやっぱり傘がたくさん落ちていました。数えると5本あります。こちらも全部開いたままの傘です。

ブルーやピンクや藤色や、女性物がたくさん。

「すぐ拾ってきてくれる。きっと近くで傘を干してた所があるんだろう。それが風で飛ばされてきたんだよ。」

マル子が拾いに行きました。

「先生、奥にもあったから、8本ありましたよ。」

「じゃあ全部で11本か、ハハハ、傘がこんなに天から降ってきたのは、生まれて初めてだね。」

軽い傘も、11本もまとめて落ちてくると、大きな音がするものです。スタッフと相談して、近所のビルに、「干してた傘が飛んでいませんか?」と、聞きに行くことにしたのです。

昔、傘に乗って空から美しい魔女が舞い降りてくる「メリーポピンズ」という映画がありましたが、今回は果たして11人の陽気な魔女が大挙してわが動物病院の屋根に降りてくれたのでしょうか?

映画にあったように、家族の絆や人の優しさを大切にしなさいというメッセージが、私たちに届けられたのかもしれません。

それにしても、いつ何が降ってくるかわかりませんね。
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