ニワトリの足
「先生、私ですね、さっき駅前のスーパーに寄ったんですよ。そしたら駐車場に、ニワトリの足が1本落ちてたんですよ。」
シーズーのフーちゃんの耳掃除をしている時、マル子がそんな報告をする。今日はマル子は遅番なので、午後からの出勤になっていた。
「えっ! ニワトリの足なの?あそこのスーパーの駐車場?」
「はい、うちの犬も一緒だったんですけど、犬より先に私が発見したので、犬が咥えたら大変と、そっちに行かないようにしました。」
「ふーん、足だけねえ。ついでにモモ肉とか、ササミは落ちてなかったの?」
「フフフ・・・ありませんでしたね。でも、何故でしょうね。もしかしたら、スーパーでニワトリを捌いているんですかね?」
「うん、精肉は捌いているだろうけどね。でも、びっくりしただろう?」
「はい、だけど不気味ですよね、ニワトリの足だけ落ちてるなんて。」
「うん、可哀想だね、足が・・・」
こんな話しがあります。
昔、ある所に一羽のニワトリがいました。白い奇麗な羽と、黄色い丈夫な足を持ち、頭には真っ赤な鶏冠をかぶっていました。
ニワトリは仲間にも自分の美しい姿を自慢していましたが、ある時、近くの田圃にふわりとツルが舞い降りてくるのを見ました。
「ああ、なんて優雅な姿だろう。すらりとした体に惚れ惚れするような足をしている。」
ニワトリは飛んで来るツルを毎日眺めているうちに、自分もどうしてもツルのような足が欲しくなりました。
「神様、どうか私にもツルのような見事な足をください。」
でも、神様からは何の返事もありません。
「神様、私はどうしてもあんな奇麗な足がほしいのです。」
しかし、相変わらず神様は黙ったままです。
「神様、私はもう我慢できません。もしあなたが私にツルのような足を下さらないなら、私も明日から夜明けを告げる鳴き声を止めます。」
すると神様はニワトリに言いました。
「ニワトリよ、お前はそんなにツルのような足が欲しいのか?それほどまでに言うなら仕方がない。さあ、自分の足をはずして、ここへ取りに来なさい。」
ニワトリは大喜びで、自分の足をはずすと、子供が慌てて靴を脱ぐ時のように、あっちにポン、こっちにポンと黄色い足を捨てて、神様の所に飛んで行きました。
「わーい、立派な足だ、素敵な足だ!」
ニワトリは新しい長い足に大喜びです。白いからだをいからせ真っ赤な鶏冠を振り立てて得意そうに歩き回りました。
「おい、どうだ、どうだ!」
ところがです。
お昼になってお腹が空いてきた頃、ニワトリはふと困りました。
食事を摂ろうと思ったとき、足が長すぎて口が地面に届かないのです。
一生懸命口を伸ばすのですが、目の前の豆に全然届きません。
「あれあれ、弱ったぞ、食べられない。足が長すぎるんだ。
・・・・
これじゃあ、もっと長い首と、もっと長い嘴(くちばし)がいるぞ。」
困ったニワトリは、神様にお願いしました。
「神様、私には長い首が必要でした。でも、まさか首は取り替えるわけにはいきません。
仕方がないので、もとの足に戻してください。」
「そうかい、じゃあ、もとの足を持ってきてごらん、付け替えてあげるから。」
ニワトリは急いで先ほどの足を捜しに行きました。慌てて脱ぎ散らかしたので、どこへやったかわかりません。
村中捜し回って、竈(かまど)のところでスープにされかかっていた足をやっと1本見つけました。
けれどもう一本の足は、とうとう見つかりませんでした。それで、そのニワトリは、足が一本だけになってしまいました。
仲間のニワトリはそんな彼を見て気の毒に思い、それ以来、夜休む時ニワトリたちは、彼と共に一本足で眠るようになったそうです。
さて、どうしても見つからなかったもう一本の足、
もしかしたらそれが、
今日、駐車場に落ちてたのかもね・・・。
シーズーのフーちゃんの耳掃除をしている時、マル子がそんな報告をする。今日はマル子は遅番なので、午後からの出勤になっていた。
「えっ! ニワトリの足なの?あそこのスーパーの駐車場?」
「はい、うちの犬も一緒だったんですけど、犬より先に私が発見したので、犬が咥えたら大変と、そっちに行かないようにしました。」
「ふーん、足だけねえ。ついでにモモ肉とか、ササミは落ちてなかったの?」
「フフフ・・・ありませんでしたね。でも、何故でしょうね。もしかしたら、スーパーでニワトリを捌いているんですかね?」
「うん、精肉は捌いているだろうけどね。でも、びっくりしただろう?」
「はい、だけど不気味ですよね、ニワトリの足だけ落ちてるなんて。」
「うん、可哀想だね、足が・・・」
こんな話しがあります。
昔、ある所に一羽のニワトリがいました。白い奇麗な羽と、黄色い丈夫な足を持ち、頭には真っ赤な鶏冠をかぶっていました。
ニワトリは仲間にも自分の美しい姿を自慢していましたが、ある時、近くの田圃にふわりとツルが舞い降りてくるのを見ました。
「ああ、なんて優雅な姿だろう。すらりとした体に惚れ惚れするような足をしている。」
ニワトリは飛んで来るツルを毎日眺めているうちに、自分もどうしてもツルのような足が欲しくなりました。
「神様、どうか私にもツルのような見事な足をください。」
でも、神様からは何の返事もありません。
「神様、私はどうしてもあんな奇麗な足がほしいのです。」
しかし、相変わらず神様は黙ったままです。
「神様、私はもう我慢できません。もしあなたが私にツルのような足を下さらないなら、私も明日から夜明けを告げる鳴き声を止めます。」
すると神様はニワトリに言いました。
「ニワトリよ、お前はそんなにツルのような足が欲しいのか?それほどまでに言うなら仕方がない。さあ、自分の足をはずして、ここへ取りに来なさい。」
ニワトリは大喜びで、自分の足をはずすと、子供が慌てて靴を脱ぐ時のように、あっちにポン、こっちにポンと黄色い足を捨てて、神様の所に飛んで行きました。
「わーい、立派な足だ、素敵な足だ!」
ニワトリは新しい長い足に大喜びです。白いからだをいからせ真っ赤な鶏冠を振り立てて得意そうに歩き回りました。
「おい、どうだ、どうだ!」
ところがです。
お昼になってお腹が空いてきた頃、ニワトリはふと困りました。
食事を摂ろうと思ったとき、足が長すぎて口が地面に届かないのです。
一生懸命口を伸ばすのですが、目の前の豆に全然届きません。
「あれあれ、弱ったぞ、食べられない。足が長すぎるんだ。
・・・・
これじゃあ、もっと長い首と、もっと長い嘴(くちばし)がいるぞ。」
困ったニワトリは、神様にお願いしました。
「神様、私には長い首が必要でした。でも、まさか首は取り替えるわけにはいきません。
仕方がないので、もとの足に戻してください。」
「そうかい、じゃあ、もとの足を持ってきてごらん、付け替えてあげるから。」
ニワトリは急いで先ほどの足を捜しに行きました。慌てて脱ぎ散らかしたので、どこへやったかわかりません。
村中捜し回って、竈(かまど)のところでスープにされかかっていた足をやっと1本見つけました。
けれどもう一本の足は、とうとう見つかりませんでした。それで、そのニワトリは、足が一本だけになってしまいました。
仲間のニワトリはそんな彼を見て気の毒に思い、それ以来、夜休む時ニワトリたちは、彼と共に一本足で眠るようになったそうです。
さて、どうしても見つからなかったもう一本の足、
もしかしたらそれが、
今日、駐車場に落ちてたのかもね・・・。
2010-03-05 15:00
nice!(0)