一か月の捜索
「大変だ!黒豆(仮名)がいなくなった!」
マダムSの家は、二月八日大騒動になりました。
黒豆ちゃんはもうすぐ1歳になる日本犬の女の子です。元気盛りです。
以前飼っていた犬が病気で亡くなってから、暫らく寂しくしていましたが、その後連れてこられた子犬です。おとなしくて、優しくて、家族中で可愛がっていました。
最近初めての発情が来て、少し落ち着きが無くなったかな?と思っている矢先でした。
「そのうち帰ってくるかも・・・」
そう思って、近所を捜しながら夜まで待っていましたが、とうとう帰ってきませんでした。
「どこに行ったんだろう? まさか車に撥ねられていないかなあ?」
楽しいはずの夕食の時も、みんなの心には黒豆がどこに行ったのだろうという心配が燻ぶりました。
次の日から、時間さえあれば、近隣を捜し歩きます。動物管理センターにも失踪犬届けを出しました。
「今日は、あっちの方面を捜してみよう。」
「今日は、こっちの方面を捜しに行ってくる。」
少しでも見かけたという情報が入れば、すぐに飛んで行って、探し回りました。
しかし、黒豆は見つかりません。
とうとう一か月がたち、三月八日になりました。
リーン、リーン、その日、電話が鳴ります。
「西区のほうで、似た犬がいたそうですよ。」
動物管理センターからの連絡に、すぐ車に飛び乗り、お父さんが出かけました。
ハンドルを握りながらも胸が高鳴り、(どうか黒豆であってくれ)と、祈ります。そろそろ現場です。
「このあたりの事かなあ・・・?」
目撃者の話しによれば、十郎川という小さな川の、少し野方寄りに、似たような犬を見かけたと言うのです。
お父さんは車を止めると、土手から川原を捜しながら早足で歩きます。
あまり奇麗な川でもありません。ゴミもあちこち捨てられています。
「近所のおばさんが、うろうろしている犬を見かけたので、呼んだそうですが、捕まえようとしたら警戒して逃げたそうです。」
聞いた話に、(黒豆だったら逃げるかなあ?うちの犬かなあ?)そう考えながら、なおも川べりを探し回りました。
「あっ!!」
その時です。少し先の川原に、犬がいました。黒豆に似ているように見えます。
「黒豆!!」
お父さんは、走り出します。
「黒豆! おまえ、黒豆だろ!?」
犬を驚かせないように息を整えてゆっくり近づきながら、お父さんは出来るだけ優しい声で、呼びかけます。
「黒豆! おいで、黒豆、お父さんだよ!」
川原でそう呼びかけながらゆっくり近づくと、なんとその犬もおどおどと近づいてくれます。
「やっぱり黒豆だ! こんなところにいたのか! おいで、怖がらなくていいよ、さあおいで!」
慎重に、慎重に呼んで、とうとうお父さんは、黒豆を抱き寄せました。もう逃げないよう、ギギュッと抱きしめました。
黒豆もお父さんの匂いが分かったのでしょう。ぺろりと顔を舐めます。感激の瞬間です。
「良かったねえ、よく無事だったねえ・・・
一か月もどこに行ってたんだ?帰り道が分からなくなったのか?
本当に心配をかけて・・・」
お父さんは改めてちょっぴり腹が立ちましたが、それも無事に見つける事が出来たので、帳消しです。
お父さんは大喜びで黒豆を抱き上げて車に乗せると、まっすぐ家に連れて帰ります。ハンドルも軽やかに、ニコニコしながら運転します。
・・・・
「ということで、昨日一か月ぶりに黒豆が帰ってきたので、ちょっと健康診断をしてもらえますか?」
と、マダムがその日、黒豆ちゃんを連れて来られたのでした。
私はその話を聞きながら、福音書に出てくる、迷子のヒツジを探し回る羊飼いの話を思い出しました。
一匹の犬でさえ、こんなに心配されているのですから、まして我が子の事であれば、親はどんなに心配するでしょう。
若い皆様は、もししばらくご両親様に連絡をとってなければ、たまには電話をしてあげてくださいね。
おっと、私も、一人暮らしの母親に、電話をしとこうかな・・・・
マダムSの家は、二月八日大騒動になりました。
黒豆ちゃんはもうすぐ1歳になる日本犬の女の子です。元気盛りです。
以前飼っていた犬が病気で亡くなってから、暫らく寂しくしていましたが、その後連れてこられた子犬です。おとなしくて、優しくて、家族中で可愛がっていました。
最近初めての発情が来て、少し落ち着きが無くなったかな?と思っている矢先でした。
「そのうち帰ってくるかも・・・」
そう思って、近所を捜しながら夜まで待っていましたが、とうとう帰ってきませんでした。
「どこに行ったんだろう? まさか車に撥ねられていないかなあ?」
楽しいはずの夕食の時も、みんなの心には黒豆がどこに行ったのだろうという心配が燻ぶりました。
次の日から、時間さえあれば、近隣を捜し歩きます。動物管理センターにも失踪犬届けを出しました。
「今日は、あっちの方面を捜してみよう。」
「今日は、こっちの方面を捜しに行ってくる。」
少しでも見かけたという情報が入れば、すぐに飛んで行って、探し回りました。
しかし、黒豆は見つかりません。
とうとう一か月がたち、三月八日になりました。
リーン、リーン、その日、電話が鳴ります。
「西区のほうで、似た犬がいたそうですよ。」
動物管理センターからの連絡に、すぐ車に飛び乗り、お父さんが出かけました。
ハンドルを握りながらも胸が高鳴り、(どうか黒豆であってくれ)と、祈ります。そろそろ現場です。
「このあたりの事かなあ・・・?」
目撃者の話しによれば、十郎川という小さな川の、少し野方寄りに、似たような犬を見かけたと言うのです。
お父さんは車を止めると、土手から川原を捜しながら早足で歩きます。
あまり奇麗な川でもありません。ゴミもあちこち捨てられています。
「近所のおばさんが、うろうろしている犬を見かけたので、呼んだそうですが、捕まえようとしたら警戒して逃げたそうです。」
聞いた話に、(黒豆だったら逃げるかなあ?うちの犬かなあ?)そう考えながら、なおも川べりを探し回りました。
「あっ!!」
その時です。少し先の川原に、犬がいました。黒豆に似ているように見えます。
「黒豆!!」
お父さんは、走り出します。
「黒豆! おまえ、黒豆だろ!?」
犬を驚かせないように息を整えてゆっくり近づきながら、お父さんは出来るだけ優しい声で、呼びかけます。
「黒豆! おいで、黒豆、お父さんだよ!」
川原でそう呼びかけながらゆっくり近づくと、なんとその犬もおどおどと近づいてくれます。
「やっぱり黒豆だ! こんなところにいたのか! おいで、怖がらなくていいよ、さあおいで!」
慎重に、慎重に呼んで、とうとうお父さんは、黒豆を抱き寄せました。もう逃げないよう、ギギュッと抱きしめました。
黒豆もお父さんの匂いが分かったのでしょう。ぺろりと顔を舐めます。感激の瞬間です。
「良かったねえ、よく無事だったねえ・・・
一か月もどこに行ってたんだ?帰り道が分からなくなったのか?
本当に心配をかけて・・・」
お父さんは改めてちょっぴり腹が立ちましたが、それも無事に見つける事が出来たので、帳消しです。
お父さんは大喜びで黒豆を抱き上げて車に乗せると、まっすぐ家に連れて帰ります。ハンドルも軽やかに、ニコニコしながら運転します。
・・・・
「ということで、昨日一か月ぶりに黒豆が帰ってきたので、ちょっと健康診断をしてもらえますか?」
と、マダムがその日、黒豆ちゃんを連れて来られたのでした。
私はその話を聞きながら、福音書に出てくる、迷子のヒツジを探し回る羊飼いの話を思い出しました。
一匹の犬でさえ、こんなに心配されているのですから、まして我が子の事であれば、親はどんなに心配するでしょう。
若い皆様は、もししばらくご両親様に連絡をとってなければ、たまには電話をしてあげてくださいね。
おっと、私も、一人暮らしの母親に、電話をしとこうかな・・・・
2010-03-23 15:00
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