猫娘、歯医者に行く
なんだかその日一日、口数が少ない猫娘でした。
朝から黄色の大きなマスクをはめて、体の動きも鈍く、淡々と仕事をしています。
(体調悪いかな?昨日は休日だったけど・・・)
私は黙って見ていたところ、お茶の時間に彼女が言いました。
「先生、私ですね、一昨日親知らずを抜いたんです。」
「え! とうとう抜いちゃったの?」
「はい、それで、口が腫れているんです。」
「えー、そうなの! 痛いよね、あれ、大変・・・。私も抜いたから。」
マル子が、気の毒そうな顔をして言いました。
「ふーん、どこの、歯医者さん?」
「帰り道にあるんですけど、ほらスーパーの向いの。
それでですね、歯ぐきを切って、歯を三つに分割して抜きますと言われたんです。ところが、レントゲンで見えない方向に、根が横にのびているところがあると、言われたんです。
なかなか抜けなくて、私、だんだん、過呼吸になってきて、具合が悪くなったんです。」
「ふんふん、それで・・・?」
「それでですね、先生が
『どうしましょう、今日は止めて、また今度にしますか?』って、聞かれたんです。
私は、何度もしたくなかったから、
『いえ、今日してください。』って、頼んだんです。
そうしたら、
『じゃあ、口腔外科の知り合いがいるから、応援を呼びましょう。』って言われて、
(私どれくらい待たされるんだろう・・・)
って、心配してたんですけど、15分くらいですぐ来たんで、
(へえ、どっから来たんだろう?)
って、びっくりしたんですが、それで、やっと親知らずが抜けました。」
「そうか、そりゃ大変だったね。」
私は、いたく猫娘に同情した。
「私、昨日が休みで良かった。歯医者さんは一日で腫れは退くとか言ったのに・・・
先生、顎がまだ腫れているんですけど、見せましょうか?」
「うん、うん、見せて!」
彼女は、お茶を置いて、黄色いマスクをはらりと、はずした。
と、そこに現われたのは、右の頬がぷっくり腫れあがり、まるで三角おむすびのような彼女の顔だった。
その瞬間、私の同情は消し飛び、あとは笑うだけでした。
朝から黄色の大きなマスクをはめて、体の動きも鈍く、淡々と仕事をしています。
(体調悪いかな?昨日は休日だったけど・・・)
私は黙って見ていたところ、お茶の時間に彼女が言いました。
「先生、私ですね、一昨日親知らずを抜いたんです。」
「え! とうとう抜いちゃったの?」
「はい、それで、口が腫れているんです。」
「えー、そうなの! 痛いよね、あれ、大変・・・。私も抜いたから。」
マル子が、気の毒そうな顔をして言いました。
「ふーん、どこの、歯医者さん?」
「帰り道にあるんですけど、ほらスーパーの向いの。
それでですね、歯ぐきを切って、歯を三つに分割して抜きますと言われたんです。ところが、レントゲンで見えない方向に、根が横にのびているところがあると、言われたんです。
なかなか抜けなくて、私、だんだん、過呼吸になってきて、具合が悪くなったんです。」
「ふんふん、それで・・・?」
「それでですね、先生が
『どうしましょう、今日は止めて、また今度にしますか?』って、聞かれたんです。
私は、何度もしたくなかったから、
『いえ、今日してください。』って、頼んだんです。
そうしたら、
『じゃあ、口腔外科の知り合いがいるから、応援を呼びましょう。』って言われて、
(私どれくらい待たされるんだろう・・・)
って、心配してたんですけど、15分くらいですぐ来たんで、
(へえ、どっから来たんだろう?)
って、びっくりしたんですが、それで、やっと親知らずが抜けました。」
「そうか、そりゃ大変だったね。」
私は、いたく猫娘に同情した。
「私、昨日が休みで良かった。歯医者さんは一日で腫れは退くとか言ったのに・・・
先生、顎がまだ腫れているんですけど、見せましょうか?」
「うん、うん、見せて!」
彼女は、お茶を置いて、黄色いマスクをはらりと、はずした。
と、そこに現われたのは、右の頬がぷっくり腫れあがり、まるで三角おむすびのような彼女の顔だった。
その瞬間、私の同情は消し飛び、あとは笑うだけでした。
2010-05-20 15:00
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