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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ラズベリー

当院の犬用の入院室は南向きで大きな窓が設けられ、明るい陽射しがたっぷり入ります。

そのガラス窓の外側には、ラズベリーとブラックベリーが一本づつ植えられており、まだ小ぶりな枝ですが最近は次々に赤い実や黒紫色の実をつけてくれます。

小指の先ほどの小さな実です。けれどつまんで口に入れるとすごく甘いのです。特にラズベリーのほうは、まるでジャムが実っているか?と思うほどの、濃厚な甘さです。

わずかな量ですが、普段自然に接する事が少ない生活をしている者には、まことに不思議な自然の恵みを味あわせてくれる収穫です。

「うーん、甘いねえ、なぜこんなに甘いんだろう。」

先日も食卓に何粒か載りました。私は一粒、一粒手に取り、眺めては口に入れて、季節の風味を楽しみました。

「むしゃむしゃ・・・」

と、その時です。
突然、プーンと口の中に、緑色の独特の臭気がひろがりました。

(あれ! これは・・・もしかしたら、あの臭いだぞ!)

私はそう感じながらも、しかし自分のその判断を疑いました。

(いや、まさか、そんなことは許されない)

そんなことは、あってはならない・・・と私は考え、自分の嗅覚を否定したのです。
けれど、いかに自分を説き伏せようとも私の鼻は、「いや、あの臭いだぞ!」と、知らせてくるのです。

数秒間の逡巡の後、勝ったのは、恐れを否定して食べ続けようとする意思でなく、鼻から届く判断でした。

「うぐぐぐ・・・」

エチケット違反を承知で、私はそばのティッシュをとると口の中の物をそこに出しました。

「ぺっ、ぺっ、ぺっ」

そして丹念に内容物を調べます。

(この中に、 入っているのだろうか、まさか・・・)

私はなおも自分の嗅覚の語るところを否定しようと試みつつ、探りました。

と、その時です。

「わあっ! こ、これは・・・・」

私の手の平に載せたティッシュの隅に、噛み潰された小さなカメムシがいたのです。

「うへえ、やっぱりか・・・こんなに小さいのに、口中しっかり臭ったなあ・・・」

私はすぐに洗面所に行ったのです。

誰ですか!「咬め虫」だから仕方ないだろうと、いう人は?
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