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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

乳歯

「そうだ! 先生、去勢手術の時ついでに、乳歯を抜いてもらえますか?」

チワワのジュンちゃん(仮名)が連れて来られた時、マダムからそう依頼されました。

「あ、はい、承知しました。」

「ついでに・・・」と、言われたのですが、実際は丈夫な乳歯が四本も残っていれば抜くのはなかなか骨です。
正確に言えば、乳歯を抜くついでに去勢をする・・・という時間配分になります。

さて、手術時間になり歯科用エレベーターを使ってゴソゴソと乳歯を処置し始めた時、猫娘が言いました。

「先生、先生は乳歯が抜けたらその歯を、屋根に投げたりしてませんでした?」

「え? あまりしなかったけど。」

「え、そうですか・・・」

そばにいた、ちょうどその日職場体験で来ていた中学生にも、猫娘は聞いた。

「ねえ、投げてなかった?」

「うちはマンションだから。」

中学生は実にそっけなく答える。猫娘はがっかりしたようだが、気を取り直して話を続けた。

「あ・・・、あの、うちもマンションだったんですけどね、で、一階でしたけど、二階のベランダに向かって投げてました。」

「え! 二階のベランダへ? それじゃあ二階の人は乳歯を見つけて、何でここにそんなのが落ちているか、えらく怪訝に思ったろうね。」

「ヘヘヘ・・・、下の乳歯が抜けたら、永久歯が早く伸びてくるように上へ向かって投げたんです。逆に上の乳歯が抜けたら下に向かって早く伸びるように、下に投げるんです。」

「下って、・・・どうやるの?」

「へへへ・・・、うちのマンションは一階には庭がついてて、その庭の先は崖でしたから崖に投げました。」

「崖って・・・、下に道か何かあったんじゃないの?」

「へへへ・・・、はい、道路になってました。私、下を歩いているおじさん目がけて、歯を投げました。」

「・・・・・・・」

・・・まったく、猫娘は抜けた乳歯までも使って世の中に迷惑をかけていたようですね。
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