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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

自転車のライト

「先生、昨日ですね、私やっと自転車屋に行って来ましたよ。」

「おお、そうか、やっと持って行けたか。」

薬の注文書を検討している時、カメ子がそばに来てそう言う。
数週間前から、カメ子の自転車のライトが点灯しなくなっていた。なんでも、ガラガラ異常音がして、だんだん点かなくなったらしい。

秋になり、暗くなるのが早くなって、点灯しない自転車では帰宅時が危ない。
路上での自転車の取り締まりや指導も、最近は厳しくなっている。
だけど、近所に自転車屋がないのです。

「先生、油をさしてもいいですかね?」

「うーん、電気系統にはささないほうがいいよ、ショートするかも。あと、ブレーキがかかる部分にはさしたら駄目だよ、効かなくなるから。」

次の日

「先生、油をさして見たんですが、全然駄目みたいです。ライトいくらぐらいするかなあ?・・・」

そんな会話を、先週したところだった。

カメ子の話は続く。

「そしたらですね、自転車屋のおじさん、『このライトはどこでつけてもらった?』と、聞いたんです。

わたしは『ここです』と言ったら、おじさん黙ってネジを調整し始めたんです。

『あの、私が油をさしたのがいけなかったんですかね。』と聞いたんですが、黙ってました。

おじさんが黙って調整しているので、私、気になってその後もさらに二回『油をさしたのがわるかったのかなあ』と繰り返したら、おじさんは

『油は関係ない』と言い放って、『さあ、これでいい』と。

先生、結局おじさんはドライバー一本で、ネジの調整だけで直してくれました。」

カメ子はとても嬉しそうにそう話してくれた。

「そうか、直って良かったね。」

私は、パソコン画面を見ながらそう答えた。おじさんの『どこでつけた?』の質問も気になったが、あとで

(それにしても、一度くらい私も、困っているカメ子の自転車を見てやれば良かったなあ・・・)

と、内心反省した。
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