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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ワクワク日曜日

「先生、この前の日曜日、私がどこに行ったと思いますか?」

午前中、手術室の器具の滅菌などをしながらカメ子が言う。

「え? どこに行ったかって? ふん、君のことだから、そうだなあ、どこかの美術館か、そうでなきゃ、天神だろ?」

「へへへ・・・、実は福岡市動物園で飼育体験教室に行ってきたんですよ!」

嬉しそうにカメ子が笑う。

「へえ、そりゃ、すごいねえ。どうだった?」

「はい、たくさん参加者があって、私はキリンとサイとサル山の担当グループに入りました。
サイの背中をブラシで擦らせてくれたんですよ。そしたら白いホコリがもうもうと上がって、頭まで白く被りました。
でもサイは、すごくおとなしかったですよ。」

「あそこにいるのは白サイだったよね、そうか、良かったね。サイは可愛いね。僕も大好きだよ。野生動物の中で、一番カッコいいね。」

私も昔、学生実習でサファリパークに行き、夕方になって棒でサイのお尻をこつこつ突付きながら、群れをサイ舎に連れ帰った時の事を思い出した。

無骨なスタイルに、角だけ突き出して、そして草食獣で、恐れ知らず。サイは野生動物の傑作デザインの一つだと思う。

そして彼らは怒らせたりしなければ、大変おとなしい動物だそうです。

「サイの角は何で出来ているか知ってますか?あれは牛の角と種類が違うんですよ。中には骨が通ってないんです。」

「ふーん、そうだったかな?皮膚の一部が変化した組織だったっけ?牛の角は切ると出血するもんね。」

「はい、それと、キリンと角はわかりますか?」

カメ子は、動物園からもらってきた動物クイズの問題用紙を開いて、私に回答を迫る。
全部で10問。
これが案外、むずかしい。キリンの角は何に使われるか?と、問題がある。

「えー、これはねえ・・・うーん、いやケンカには使わないだろ?首を叩きつけ合うのを見た事があるけど、角でぶつかってなかったぞ。」

「いいえ、ケンカで使うそうですよ!

じゃあですね、ツシマヤマネコの耳の裏には白い斑点があります。同じような斑点を持つ動物は、以下のどれですか?」

「えーと、タヌキじゃないぞ。アライグマは載ってないし、どれだろ?」

「へへ・・、トラと野生の猫類です。これは共通の特徴らしいですよ。」

カメ子は得意そうに話す。次から次に質問しては、自分の優位をひけらかす。
(ちきしょう、君は昨日、聞いてきたばかりだから知ってるだけだろうが。)

私は少し悔しさを感じながらも、それを表情に出さずに彼女の話に耳を傾ける。

「それからですね、サル山も入りましたよ。」

「え? サル山に?危なくないの?襲われなかった?」

「はい、案外おとなしかったですよ。」

(カメ子は飼育員がいるから襲われなかったことに気づいていないようだ。きっと、一人でサル山に行けば、襲われるに決っているんだ。)

やはり学生時代実習先で、10kg程度の小さなテナガザルに襲われて、引き倒され、4針縫う怪我をしたところで、レインジャーに助けてもらった経験のある私は、ぶつぶつ胸のうちでつぶやきながらも、やはり黙ってカメ子のわくわく体験を聞いていた。

「中学生と高校生も来ていて、彼らはサル山のてっぺんまで上がって写真撮影をしてもらってましたが、わたしはそこまでは遠慮しましたよ。

でも、高圧ホースがあって、それで水圧で掃除が出来るんですが、力が強かったです。

それで車を洗ったりしようものなら、ワイパーが壊れるくらいの水圧があるそうです。

『お客さんに水がかからないようにしろよ!』って言われました。」

次から次に、楽しそうに報告をしてくれる。

「それでですね、餌の準備室に行ったら、サルのペレットフードがあって、『これは人も食べれるんだよ、食べて見るかい?』って、聞かれたんです。

他の人は尻込みしたんですが、私は食べて見たんです。ビスケットみたいな感じかな?

そしたら飼育員から、『食べて見る?って聞いて、本当に食べたのは今までであなたが初めてですよ!』って、言われちゃいました。へへへ・・・」

カメ子の話はまだまだたくさんあったが、ここに紹介し切れません。

興味のある方がおられましたら、カメ子が忘れないうちに、聞いてあげてください。

すごく楽しそうに話してくれますよ。
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