自転車事故
「うーん、腕に力が入らないなあ・・・先生、昨日、私、またこけちゃったんですよ。」
十二月に入ったばかりのある朝でした。冬の陽差しが病院の待合室にそそがれています。
診察台でプードルのジャックちゃんを保定していたマル子が、腕をさすりながらそう話し始めます。
「自転車で帰ってた時です。」
「おや、またやったのか?」
「ヘヘヘ・・・はい、仕事を終えて、水路沿いの道をこいでいたんです。ライトは点けてたんですが、男の人にぶつかりそうになってよけたら、そのままフラフラとバランスをくずし、そしたら目の前にコンクリートの車止めがあったんです。
(ガッチャーン!!)
ぶつかった時はすごく痛くて、もう立てないかもと思ったんですが、(こんな所で誰も助けてくれないだろうな)と、思ってとにかく起き上がりました。」
「へえ、すぐ誰か助けてくれなかったの? そのぶつかりそうになった人は?」
「その人は多分気づかないまま、スッと行ったんだと思います。他に一人、チラと見て通り過ぎた人もいたかなあ。でも、誰も助けてくれませんでした。」
「マル子、ほら、あまりにも奇麗な女性には、男は近づきがたくなるから、きっとみんな、つい遠慮したんじゃない。
際立った美人には、男は近づけないんだよ。」
「フフフ・・・、やっぱりそうですかね。
それでですね、自転車がなんとなくおかしいぞと思ったら、ハンドルが半回転していて、『えいっ!』てやるとそれは直ったんですが、乗ろうとしたらチェーンもはずれていたんです。
チェッ、こんな暗いところでは直せないと思い、賀茂の橋の明るい所まで持って行って直しました。
厚着してたし、手袋もしてたから切り傷はなかったんですが、ストッキングも破れ、ほら、打ち身もできましたよ。
もう散々でした、トホホ・・・」
「帰ってから、うちの人に言った?心配したろ?」
「はい、母が『あんた、またこけたと? ようこけるね。四度目は車に轢かれてしまうよ!』って、言われました。」
「うん、猫娘が退職してこの忙しい師走に、君まで怪我で入院でもしたら、きっとカメ子が怒り狂うぞ!」
「フフフ・・・、そうですね。怒られますね。」
皆さん、自転車も軽車両です。
安全な運行を、心がけましょうね。
そして美人でも遠慮せず、助けてあげてください。
十二月に入ったばかりのある朝でした。冬の陽差しが病院の待合室にそそがれています。
診察台でプードルのジャックちゃんを保定していたマル子が、腕をさすりながらそう話し始めます。
「自転車で帰ってた時です。」
「おや、またやったのか?」
「ヘヘヘ・・・はい、仕事を終えて、水路沿いの道をこいでいたんです。ライトは点けてたんですが、男の人にぶつかりそうになってよけたら、そのままフラフラとバランスをくずし、そしたら目の前にコンクリートの車止めがあったんです。
(ガッチャーン!!)
ぶつかった時はすごく痛くて、もう立てないかもと思ったんですが、(こんな所で誰も助けてくれないだろうな)と、思ってとにかく起き上がりました。」
「へえ、すぐ誰か助けてくれなかったの? そのぶつかりそうになった人は?」
「その人は多分気づかないまま、スッと行ったんだと思います。他に一人、チラと見て通り過ぎた人もいたかなあ。でも、誰も助けてくれませんでした。」
「マル子、ほら、あまりにも奇麗な女性には、男は近づきがたくなるから、きっとみんな、つい遠慮したんじゃない。
際立った美人には、男は近づけないんだよ。」
「フフフ・・・、やっぱりそうですかね。
それでですね、自転車がなんとなくおかしいぞと思ったら、ハンドルが半回転していて、『えいっ!』てやるとそれは直ったんですが、乗ろうとしたらチェーンもはずれていたんです。
チェッ、こんな暗いところでは直せないと思い、賀茂の橋の明るい所まで持って行って直しました。
厚着してたし、手袋もしてたから切り傷はなかったんですが、ストッキングも破れ、ほら、打ち身もできましたよ。
もう散々でした、トホホ・・・」
「帰ってから、うちの人に言った?心配したろ?」
「はい、母が『あんた、またこけたと? ようこけるね。四度目は車に轢かれてしまうよ!』って、言われました。」
「うん、猫娘が退職してこの忙しい師走に、君まで怪我で入院でもしたら、きっとカメ子が怒り狂うぞ!」
「フフフ・・・、そうですね。怒られますね。」
皆さん、自転車も軽車両です。
安全な運行を、心がけましょうね。
そして美人でも遠慮せず、助けてあげてください。
2010-12-02 15:00
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