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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

お祖父ちゃんの話

「先生、うちのお祖父ちゃんですね、ちょっと変わってるんですよ。」

病院に来たあるマドモアゼルが、にっこり笑いながら話してくれました。

「お祖父ちゃんは何人兄弟だったのかなぁ?お母さんのほうのお祖父ちゃんなんですけどね。
この話しには戦争が絡んでるんですよ。

その頃戦争があって、上のお兄さんは結婚していたのですが、戦争に行って戦死したので、お祖父ちゃんは次男だから長男の嫁と結婚するように父親から言われたそうです。

『兄嫁といっしょになれ。』

『いやだ、そんな気はない。』

『それじゃあ、もうお前は家に残るな。親子の縁を切るぞ。』

『ああいいさ、こんなところ、出て行ってやる!』

お祖父ちゃんにはその時好きな人がいたみたいです。

でもお祖父ちゃんもその後出征し、中国方面へ行ったそうです。

やがて戦争が終わりましたが、お祖父ちゃんが帰って来ないので好きだったその女性は他家へ嫁ぎ、そのあとでお祖父ちゃんは引き上げてきたんです。右足に被弾して足をひきずって。

その後お祖父ちゃんは見合い結婚をしたんですが、相手の女性はやはり戦争から許婚(いいなずけ)が帰って来なかった人でした。

そんな訳で、お祖父ちゃんは本家の土地をもらえずに、自分でお金を払って買い取ったそうです。

周りの親戚の話だと、そんなお祖父ちゃんは若い頃モテモテだったらしく、私が写真を見たら本当にジャニーズみたいな顔をしてるんです。

戦後は農協の職員として働いていたそうです。
獣医さんにも、よくついて走り回っていたそうです。

施設に入ることになって、最初はおばあちゃん達に飴玉をあげたりして、『さすがお祖父ちゃん』って、母が呆れてましたが、そのお祖父ちゃんも今年は96歳になり、子供の顔も孫の顔もわからなくなりました。

それでも、

『こんな施設に入るんやったら、満州にずっとおれば良かった!』と言うんです。

私、『満州でどんないいことがあったんやろ?』って不思議に思うんですが・・・。

・・・ここで、マドモアゼルの話は終わりです。


一人の歴史、人の人生って、本当に切なく、悲しく、いじらしく、そして感慨深いものですね。
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