SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

コッカーの里親捜し

「先生、昨日ですね、私の夢に先生が出てきて、『コッカースパニエルの名前はムーちゃんにしよう』って、言ったんですよ。
 でも私は『ケンジがいいかな』って、言ったんです。」

ある日カメ子がそう言う。

コッカースパニエルというのは、当院で里親探しをしているワンちゃんのことです。
バフ(薄茶色)の可愛い子ですが、事情があり飼主が飼育できなくなって、安楽死に連れて来られました。

でもまだ三歳、純血種ですし、もし見つかるものならばということでしばらく預かり、里親募集をしていました。

しかし世の中、そう甘くはいきません。
ポスターを掲示し、来られる方に声をかけても、なかなか良い情報は入りませんでした。

「そうか、君の夢の中に私を登場させてもらったのか。それは名誉なことだ。ありがとうよ。
 でも、君はなぜケンジがいいんだ?」

「はあ、それが、わからないんです。」

なにしろ夢の中の話だから、深層心理で何かに結びつくのかどうか知らないが、それ以上カメ子の夢に立ち入るわけにもいかない。

「ふん、じゃあ、夢に従ってムーちゃんに変えようか?」

「いえ、今のまま、クーちゃんでいいです。」

そんな話をしながら毎日が流れていきましたが、何も知らないクーちゃんは、毎日ケージの中で糞を踏みたくります。

もしかしたら、十分な排便のしつけもされてなかったのかもしれません。

「あっ! またやったな! そんなことじゃ、だれももらってくれないぞ。」

掃除掃除の繰り返し、そして体の洗浄で大変でした。

こうして日にちばかりが過ぎ、クリスマスも近くなり、もういよいよ行き場がないかな?と思われた矢先でした。

ある日、連絡が入りました。
元スタッフの猫娘の知り合いにようやく里親先を見つけてもらえたのです。

「よかったな、お前、飼ってもらえるぞ!」

何も知らないクーちゃんは、ただ嬉しそうに短い尾を振るばかりです。

それにしても猫娘の、今年一番のお手柄でした!!
トップへ戻る
nice!(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。