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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

大晦日前日の思い出

「あ、あなた! 大変! 大変!!」

それは二年前、暮れも押しつまった十二月三十日のことでした。
働き者スタッフが集まった当院では、もちろんまだまだ仕事に励んでおりました。

そんな朝に妻がただならぬ声で診察室の私を呼びに駆け込んで来ました。
私はドキッとして、「しまった、あの事がばれたかな?」と思って・・・、

いやいや、そんなことはありません。

私はドキッとしながらも、「何事だ?一体、どうしたの?」と、なるべく落ち着いて答えました。

「大変なのよ! 水が、水が漏れて止まらないの。溢れてるのよ。」

「えっ!? どこから?」

「裏よ、犬舎の汚物流しのところよ。」

「えっ? どこだよ・・・」

私は嫌な予感を感じながら、妻の案内について行く。

「ほら、ここよ!」

むむむ・・・、たしかに。立ち上がったパイプの、コンクリとの接点付近から、湧き水のように水が溢れている。

「大変だ! これは早く止めないと、それこそ湯水のように水道代が流れて行ってるんだ。」

小心な私はあせる。すぐにひらめいた一軒知り合いの設備屋さんに電話をするが、あいにく仕事で出払ってて、帰りは遅くなるという。

(ああ、やっぱり駄目か。何しろ、暮れの三十日だもんなあ)

あわてて名刺ボックスをめくり、「これだ!電話よつながってくれ」と祈りつつ、何年か前工事に来てもらったことのあるもう一軒の設備屋さんに電話をした。

「もしもし、あの、年末のこんな時にすみませんが、水漏れで、みてもらえませんか?」

多分、犬の具合が悪くて、時間外に電話する飼い主さんの気持ちは、ちょっとだけこれに近いかもしれない。

「はい、わかりました。いいえ、覚えてますよ、はい、行きます。」

若いお兄さんがすぐに駆けつけてくれた。
振動ドリルを出して電源を繋ぐと、木枯しの寒い中、すぐに水漏れ付近のコンクリをはつり始めた。

「ダダダダダッ・・・・、 ダダダダダダダッ」

やがて地中の水道管付近が見えてくる。

「ははあ・・・、これはどこが工事をしたんでしょう?
ご主人、ほら、太さが違う二本のパイプをチューブを使って無理やり繋いでいるでしょう。だから、そこから漏れているんですよ。」

「え? そうなんですか? ・・・」

「ちょっと部品を用意しますね。いえ、すぐ戻ってきますから・・・」

若いお兄さんはそう言い残すと車に飛び乗り、どこかへ言った。
(大丈夫かなあ?・・・)

ちょっと心配だったが、彼はすぐ戻ってきて、てきぱきとパイプを繋ぎ換えてくれた。

「少しの間水を止めますよ、いいですか?」

本当に手際よく、彼は仕事を片付けてくれた。
おまけにセメントを練り始め、はつったコンクリの部分を塗りなおしてくれたのだった。

「明日まで水を流さないようにしてください。これで大丈夫でしょう。」

彼の笑顔に我々も安心。とりあえず2時間で直してくれました。
年末の出動でさぞ高いかと心配した修理代も、29,400円ですみ、D設備屋に感謝!

こうして年の瀬になり、ふと思い出してしまった2年前の出来事、あの青年の笑顔でした。
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