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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

12歳の夢

「ああ、いらっしゃい、どうぞ見て行ってください。」

ある日、妻の中学時代の友人であるマダムが、お嬢さんを連れて遊びに来てくれました。

「うちの子が将来獣医さんになりたいって言うから、いつか一度見学に寄らせてもらえませんか?」

以前より鎌倉に住むマダムから、そんな連絡をいただいていたのです。お嬢さんはこの春、中学に進学するとのことでした。

「どうぞ、どうぞ、・・・ここが手術室だよ。・・・こっちは散らかってるけど、院長室で、・・・そしてここは検査室になってますよ。血液検査などの機械が置かれていてね・・・」

狭い院内の案内はすぐ終わり、ちょうど昼休みの時間、猫の去勢手術が入っていたので、隣の部屋から見学していただきました。

「大丈夫ですか?気分は悪くならない?」

手術を見ているうちに時々倒れる人がいるけれど、その母娘は大丈夫でした。

「どうして獣医になりたいの?」

「動物のお医者さんを読んで・・・。」

むむむ・・・、やっぱりそうか。「動物のお医者さん」はもう古い漫画ですが、いまでも根強い人気をもっているようです。

漫画といえど馬鹿になりません。いえ、漫画恐るべしです。
現実世界であろうが、漫画であろうが、小学生の目に入るもの、耳に聞こえるものの中から、彼らの将来の職業は選択されていくわけですから。

私だって中学生の頃、西部劇の世界に憧れて広い牧場で働こうと獣医の道に進んだのですから、同類です。

むろんこれから彼女の進路や夢はいくらでも変遷をしていくでしょう。でも、小学校を卒業し12歳の今、何かに憧れている、そのことが大事なのです。

今、何かをめざすことが、「めざす習慣、想像力をかきたてる訓練」になっていくのでしょう。

だいたい30すぎても、40すぎても、違うことを始める人、新しい事にチャレンジする人が珍しくはない時代です。

変らない事も素晴らしいし、変れる事も凄いのです。

さあ、我が動物病院がどんな風に彼女の目に映ったでしょうか?

その日少女が見たことは、彼女の意識の下に深く沈みながら、いつか答えを出すのでしょう。
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