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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

塾のお誘い

「マダム、もう団地の桜は咲きましたか?」

「ええ、もうすっかり咲きましたねえ。三日の日に老人会で花見をしたんですが、その時は少し早かったけど・・・。」

猫の「のら」ちゃんを連れて、マダムNがおいでになりました。のらちゃんは黒と白の模様が奇麗な20歳をすぎた高齢猫です。時々爪切りに来ます。

「今年は咲くのが遅かったから、桜の下を歩いて入学式に行けそうね。うちは孫が二人、中学と高校とに入学するのよ。」

「おやマダム、それはおめでとうございます!」

「ふふ・・・、子供の数は減ったというけど、高校に入れるのはまだ大変よね。」

「そうですね、高校も定員を減らしてますしね。」

「あのね、今日車を運転してきた娘なんだけどね、あの子が中学生になって塾に入った時よ。お友達を紹介すると何かもらえるというのがよくあるでしょう。

それで娘は『私も誰か友達か家族紹介したいなあ。でも、誰もいないなあ・・・・』と言ってたの。それでこっそり『のら』を紹介したらしいのよ。

そしたらさ、それから何度も何度も『のら子様』って、塾から案内書が届くようになったの、フフフ・・・。

とうとう6年間、「のら子様」って案内が来てね、

『あんたが紹介したんだから、もう、のらを塾に連れて行きなさい。』って、私言ったわよ、フフフ・・・のら、あんた塾に行ってたら、もう少し頭のいい猫になってたかしら。」

マダムはのらちゃんを胸に抱き、笑いながら帰って行かれました。

それにしても、塾から6年間もお誘いが来ていたとは、のらちゃんは知ってたかしら・・・?
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