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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

あわてんぼう

「さあ、今日は夏休みの三日目、預かりのワンちゃん、猫ちゃんたちは元気かしら?」

世間ではいわゆるお盆休みの最中でした。当院でも三日間のお休みをさせていただきました。
とは言え、旅行に出かけたりする飼主さんのために、ペットの預かりはしているので、休み中でも当番でスタッフが交代で出てきます。

その日はカメ子の当番でした。

「ルンルンルン・・・」

カメ子はまず犬舎に行って掃除をし、一頭一頭散歩に出し、フードを準備します。
コザクラインコの水も換えました。

「さあ、次は猫だわ。ルンルンルン・・・」

鼻歌を歌いながらカメ子が猫舎に入ります。

「おはよう?チビさん、ご機嫌どう?」

4ヶ月くらいの可愛い盛りの小さな三毛猫の子供が、ケージの中の籠から顔を出しました。

「ミャーッ!」

「チビさん、元気そうね!」

カメ子がそう言って子猫を抱こうと手を伸ばしたときでした。カメ子の背中をスーッと、寒気が走りました。

「キャッ! 子猫の手が折れてる!」

なんと子猫の右手が、カクンと内側に折れ曲がっているのです。

「エー! 大変!どうしよう!」

子猫は元気にミャーミャー鳴きながら、なついてすりすりしてくるのですが、前足がくるんと曲がっています。

休みの日なので、院長は外出中です。

「どうしよう、どうしよう・・・」

思い余って、カメ子はマル子に電話をしました。

「マル子さん、大変!子猫の足が折れてるかもしれない。曲がってるの。」

「フフフ、なんだ、そんなこと。その子猫は生まれつき足が曲がってるの。少なくとも飼主さんが保護した時から曲がっていたの。

だから、心配しなくていいわよ。」

以前子猫が来た時に、ちょうどカメ子が休みか何かでいなかったので、彼女だけ事前に知らないままになったようです。

「え! ・・・そうか、そう言えば、子猫はちっとも痛がらないし、元気で前足を使っているわね。・・・腫れてもないし、ハハハ・・・よく見れば折れてないってわかるわね。

まったく私としたことが早とちりだったわ。」

カメ子は改めて子猫の所に行き、声をかけながら撫でてあげました。

「ミャーン ミャーン、」

三本の足でピョンコ、ピョンコ嬉しそうに跳ねながら、子猫はカメ子に「遊んでよ」と、まとわり付くのでした。
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