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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

オレンジ色のゴーヤ

「先生、ゴーヤが出来たので食べてください。」

カメ子が帰った後、一枚の書き置きと、小さな包みが置かれていた。

(おお、ついにゴーヤが育ったのかな?)

開けてみると、驚くほど鮮やかなオレンジ色に染まった、ぷくぷくしたゴーヤが一本入っている。

(むむむ、こんな色のゴーヤ、見たことないぞ。ゴーヤは緑に決っていると思っていた。そういえばキューリも熟れると黄色くなるけど、どうやらこいつも完熟したというわけかな?)

触るとぷくぷく、ぶよんぶよんして、何だか気色が悪い。
しかし、色はきれいだ。熱帯フルーツのように、きれいだ。

生まれて初めてカメ子が育てた、彼女にとってとても意義深い大切なゴーヤ。

果たして何本生ったかわからないが、ベランダ栽培だから、貴重な一本に違いない。その大切な一本を、私にくれるとは、かたじけないことだ。

「カメ子からゴーヤをもらったよ、作ったんだって。さっそく料理しておいて。きっとカメ子は、『どうでしたか?美味しかったですか?』って聞くに決ってるから。感想を言うまで、聞かれるから、食べてみよう。」

私は妻に、調理を頼んだ。

夜出てきたそれは、予想を上回って柔らかくて、口に入れると溶けるように思われた。

(うーん、これは柔らかい。ゴーヤを食べてる気がしない。でも、確かに苦味があるぞ。)

私は、カメ子の夏の汗の結晶、労働の実りを、味わわせてもらった。

翌日、さっそくカメ子が聞いてきた。

「先生、どうでした、ゴーヤ!」

「うん、すごいきれいな黄色だね、それにぷわぷわして柔らかかったね、びっくりしたよ。」

「そうでしょ、すごいオレンジ色だったでしょ。」

「うん、カメ子みたいにきれいなゴーヤだったよ。線維がほとんどない感触で。」

「・・・・・、あの、それで、どうやって調理したんですか?」

「え? 調理? はて、どういう料理かな? 油で炒めたのと違うかな・・・?」

「何と混ぜました?」

「うーん、何が混ざってたかな? うーん、思い出せない。」

「・・・もう、いいです。後で、奥さんに聞いてみます。」


果たして私の感想は、カメ子の期待に応えられたのであろうか?
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